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「大西巨人『縮図・インコ道理教』」
大西巨人氏「インコ道理教」が、はてなアンテナによれば「2004/10/12 20:15:10」に更新されました。第三回連載の目次は次の通りです。





    • 5 喫茶店「母子草」にて(その二)





今回はリーダーで11ページ分です。連載3回目を記念して、今回から当blogにも新たなカテゴリーを作ってみました。左上の「大西巨人」というところをクリックすれば、過去の戯言から大西巨人に関係し、かつ多少の資料的価値がありそうなエントリーを見ることが出来ます(あ、あるかなぁ…)。機会があればご利用ください。







引用とオマージュについて
同作品には、膨大な量の引用や固有名が溢れ返っています。それは、「まえがき」に記されている次のような言葉からも伺えます。


〔一〕作者は、東京キララ社刊『オウム真理 教大辞典』、岩波書店刊『広辞苑』、三省堂刊『広辞林』、小学館刊『日本国語大辞典』、朝日新聞社刊『朝日人物事典』その他の諸辞典類の記載を引用または援用または活用――むろん、「活用」は、「換骨奪胎」を含む、――し、時としては辞典名そのものを仮構した。
おおかた作者は、辞書一般の存在理由(レーゾンデートル)が江湖の大方による広義の引用または援用または活用であることを重々承知するとはいえ、如上の諸辞典への感謝を、ここに事新しく明記せずにはいられない。

〔二〕このたびも、作者は、先人ならびに同 時代人の多様な業績の中で仕事をした。杉山武子著『夢とうつせみ /一葉樋口夏子の肖像』第二刷〔IMIオフィス二〇〇〇年刊〕、田中優子著『樋口一葉「いやだ!」と云ふ』〔「集英社新書」二〇〇四年刊〕、渡辺脩著『麻原を死刑にして、それで済むのか?』〔三五館二〇〇四年刊〕、青沼陽一郎著『オウム裁判傍笑記』〔新潮社二〇〇四年刊〕、それにインターネットで三浦英明著『サリン事 件への問題提起』を新たに読んだことも、有益であった。


具体的には、どれだけの量の固有名(資料名、書名、登場人物など含む)が記されているのでしょうか。連載第三回の時点ではありますが、少し書き出してみたいと思います。





【献題】
大西巨人一九四七年作『精神の氷点』
大西巨人一九六三年作『神聖喜 劇』第二部「混沌の章」…大前田軍曹
大西巨人二〇〇一年筆『二十一世紀初頭の中心課題』




【前書き】東京キララ社刊『オウム真理 教大辞典』
岩波書店刊『広辞苑
三省堂刊『広辞林』
小学館刊『日本国語大辞典
朝日新聞社刊『朝日人物事典』




【序曲(プレリュード)】
・首都ウンモ社二〇〇三年刊『インコ道理教小事典』
・小冊子『ある無名氏の手記』
ドストエフスキー作『白痴』…ムイシュキン公爵




【遠景】
・『広辞苑』第五版〔岩波書店一九 九八年刊〕
・ベティ・マ ーティン著 "Miracle at Carville"〔『カー ヴィルの縮図・インコ道理教 第一回奇蹟』〕
・大学教授・批評家 武口美図(たけぐちよしのり)
・当代文学会(近現代日本文学研究者の団体)ゲスト(非会員)の「長老作家」大圃宋席(おおそくにのぶ)
・参加者A
・参会者B
中野重治『文学作 品に出てくる歴史的呼び名について』
島崎藤村『破戒』




【中景】
・参会者C
・批評家真田宗索『新憲法は自前である』
・批評家真田宗索『奇怪な一 存在』
・(参加者)D君
・『日夜新聞』一九八一年十二月九日号朝刊
・『五日市憲法草案』
仙台藩下級武士の子息千葉卓三郎〔二十八歳〕☆
・深沢村戸長の 長男深沢権八〔十九歳〕☆
・☆らが設立した学習結社「五日市学芸講談会」。千葉が起草した「私擬憲法草案」。
家永三郎著『日本近代憲法思想史研究』〔岩波書店一九六五年増訂版刊〕の第二章「明治憲法制定以前の憲法の諸構想」
・海洋社一九八九年四月刊「人権小冊子双書」『人権と日本国憲法
・船戸良淵〔恐竜社発行月刊文芸誌『氷河』副編集長・三十代後半〕
・船戸の高校、大学同期同窓生山村数茂
・ウェイトレス
・店長の末松→末松雅之
樋口一葉
・並木鏡太郎
八住利雄
山田五十鈴
・猪股勝人・田山力哉著『日本映画作家 全史』〔社会思 想社刊〕
山中貞雄
伊丹万作
稲垣浩
嵐寛寿郎(アラカン )…『右門捕物帖・謎の八十八夜 』、『鞍馬天狗・大江戸異変』、『魚河岸帝国』、『天皇・皇后と日清戦争』、『花嫁吸血魔』
八住利雄〔一九〇三年.一九九一年〕『樋口一葉』(一九三九年)、『戦争と平和』(一九四七年)、文芸映画『細 雪』(一九五〇年)、豊田四郎監督と組んで『或る女』(一九五四年)、『雪国』(一九五七年)、『夫婦善哉』(一九五五年)、『猫と庄造と二人のをんな』(一九五六 年)、『駅 前旅館』( 一九五八年)以降の「駅前もの」
・『現代日本人物事典』〔朝日新聞社刊〕
エノケン榎本健一
・P先生の高校時代の国語 の先生〔Q先生。一九一八年生〕
・並木鏡太郎演出・八住利雄脚色・山田五十鈴主演の映画『樋口一葉
・杉山武子著『夢とうつせ み/一葉樋口夏子の肖像』所収「樋口一葉略年譜」
・『たけくらべ
・『にごりえ
・『文学界』
・齋藤緑雨
・生徒X
・Xの父親Y〔四十代後半・理髪師〕
・Yの父Zは、大正八年〔一九一九年〕(当時の水呑み百姓、軍隊生活者)
水上瀧太郎〔一八八七年.一九四〇年〕…長編『大阪』(一 九二三年)、『大阪の宿』(一九二六年)、随筆集『貝殻追放』(一九二〇.一九四一年)、『水上瀧太郎全 集』十二巻(一二四〇.一二四一年)
朝日新聞社編『現代日本人物事典』
泉鏡花
永井荷風
・保田万太郎
川端康成〔一八九九年.一九七二年 〕
水上瀧太郎氏の『樹齢』(中央公論
石坂洋次郎氏の『馬骨 団始末書』(改造)
青野季吉
・『一九三四年九月文芸時評』の「5文壇の垣」
水上瀧太郎氏の『世継』(中央公論





この中には「実在」しないものもあります。しかしこれだけの量の「引用の織物」を作ることに、まず驚いています。まだ32ページなのに、なんだこの量(驚愕)。大岡昇平『レイテ戦記』も膨大な量の資料に支えられていましたが、両者の性質の違いについて真剣に考えてみたくなりました。