伊藤詩織氏と大澤昇平氏との裁判、判決内容が示唆するもの

ジャーナリストの伊藤詩織氏と、最近はTwitterのプロフィールに「Ex-東大最年少准教授」「経済学者」という肩書きをつけている大澤昇平氏との裁判について、東京地裁は7月6日、大澤氏に対し、33万円の支払いと投稿の削除を命じました。判決文の内容を踏まえつつ、投げかけられている課題について考えてみます。

まずは、判決文から抜粋・要約しながら、事の経緯を追いましょう。

裁判の前提

  • 大澤昇平氏は、東京大学大学院情報学環・学際情報学府所属の特任准教授の職にあった者である。ツイッター上の被告のアカウントは、2020年7月20日時点で、約1万8000人のフォロワーを擁していた。
  • 大澤氏は、「伊藤詩織って偽名じゃねーか!」という文章に「# 性行為強要」及び「#芦暁楠」とのハッシュタグを付し、平成22年9月 8日に東京地方裁判所において伊藤詩織こと芦院楠という人物について破産手続が開始したことが記載された官報公告記事の画像を添付したツイートを投稿した。
  • 実際には、原告伊藤氏の本名は「伊藤詩織」であり、通名はなく、過去に破産手続開始決定を受けた事実もない。
  • なお、大澤氏は他にも、以下のようなツイートを行なっていた。
  • 「どういうロジックで訴えるんだ?別に伊藤詩織を名指しで誹謗中傷してるわけじゃないから、名誉棄損には当たらないでしょ」
  • 「伊藤詩織の何がダメダメかって、刑事裁判でレイプが認められなかったにもかかわらず、その後の民事裁判の結果をレイプを関連付けている点。今回もやってることの筋が通っておらず全く支持できない。」
  • 「(スラップ訴訟というリプライに対して)恐らくそうでしょう。ただ伊藤氏の場合はこれまでの行いもあって露骨に透けて見えるため、よりセコく見えちゃいますね。」
  • 「具合悪そうだから介抱したのに急に「レイプされた」とかファビョり出して社会的地位を落としにかかってくるのトラップ過ぎるし、男にとって敵でしかないわ」
  • 訴訟開始後も、大澤氏は伊藤氏に対し、否定的なツイートを繰り返していた。

大澤氏は数々のツイートを行なっていますが、今回の裁判では、大澤氏が「伊藤詩織って偽名じゃねーか!」という文言と共に、伊藤氏が破産経験者であるかのように受け取られる画像をツイートしたことを受けてのものです。よって裁判では、この一件のツイートについて、どのような認定がなされるかが問われていました。つまり争点は、次のようになります。

主な争点

(原告=伊藤氏側の主張)

本件ツイートは、原告が本名を芦暁楠、通名を「伊藤詩織」とする外国人で、平成22年9月8日に東京地方裁判所で破産手続開始決定を受けたという事実を摘示するものである。 本件ツイートは、原告が支払うべき債務を支払うことができず、破産に至ったかのような印象を与えるから、原告の社会的評価を低下させる。

(被告=大澤氏側の主張)

「伊藤詩織」という名前は、ツイッター上も多数存在する上、芦暁楠という破産手続開始決定を受けた原告と別人であることは既にネット上で拡散されており、広く認識されていたから、一般読者において、本件ツイートが原告について言及したものと最終的に認識されない以上、一般の読者の普通の注意と読み方とを基準として、本件ツイートが原告に関する何らかの事実を摘示したとは認められないし、本件ツイートによって原告の社会的評価は 低下しない。


伊藤氏側は、伊藤氏が破産に至った人間であるかのようなツイートは、社会的評価を下げると主張。対して大澤氏側は、このツイートは別の「伊藤詩織」氏についての投稿であり、読者もそのように受け止めると反論します。なお、裁判の中で伊藤氏側の弁護士が、「では、被告は、この『伊藤詩織』は誰だと考えてツイートしたのですか?」と尋ねるも、大澤氏側が答えられないという一幕もありました。

続いて、慰謝料について見てみましょう。

 

慰謝料について

(原告=伊藤氏側の主張)

本件ツイートは、原告の経済的信用を毀損しただけでなく、別件性被害の二次被害というべき訴外B(補足:はすみとしこ氏)による誹謗中傷行為に対して原告が別件名誉毀損訴訟を起こしたことを理由に、さらに原告を誹謗中傷するものであり、本件ツイートによる被害は原告にとって別件性被害の三次被害と評価できる。これにより原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料は100万円が相当である。(補足:これに加えて弁護士費用10万円分が加算)

(被告=大澤氏側の主張)

否認ないし争う。本件ツイートが、原告が破産手続開始決定を受けた事実を摘示すると認められるとしても、上記摘示事実は専ら原告の経済的信用を低下させるものであり、別件性被害とは無関係である。また、上記摘示事実は、本件ツイートに添付された画像により間接的に摘示されるにとどまるから、その影響力は小さい。


伊藤氏側は、大澤氏のツイートは、二次加害を訴えた裁判をさらに中傷する三次加害であり、精神的苦痛が大きいと主張。ツイートの削除を求めます。対して大澤氏側は、これはそもそも別の伊藤氏についての投稿だが、仮に原告の伊藤詩織氏について触れたと読まれたとしても、経済的信用をさげたとしても三次加害には当たらず、画像による間接的な言及なので影響は小さいと主張。ツイートの削除は否認します。

これらの争点について、裁判所はどのように判断したのでしょうか。名誉毀損にあたるかどうかは、「一般の読者の普通の読み方」を基準として考えます。つまり一般的な人が大澤氏の投稿をみて、「これは、原告である伊藤詩織氏への中傷だな」と読むかどうかがポイントになります。判決文を読んでみましょう。

 

裁判所の判断

被告は、①原告と同姓同名の人間に関する話題はツイッター上も多数存在すること、②原告が芦暁楠という人物と別人であることは本件ツイート時点で広く認識されていたことを理由に、本件ツイートが原告について何らかの事実を摘示するものとは認められないと主張する。
しかしながら、原告が「伊藤詩織」という実名を明らかにして別件性被害を訴えて社会に発信している人物であること、「#性行為強要」のハッシュタグは、性被害に関する文脈で用いられているものであること、本件ツイートに先立ち、被告が複数回原告を名指しした上で別件性被害や別件名誉毀損訴訟に言及する投稿をしていること等に照らし、一般の読者の普通の注意と読み方を基準にすれば、本件ツイートが「伊藤詩織」という人物の中でも原告を名指しするものであることは明らかである。よって、被告の上記①の主張は理由がない。
一方、本件各証拠によっても、原告が芦暁楠という人物と別人であることが、一般の読者による解釈の当然の前提であるといえるまで社会的に広く認識されていたと認めることはできない。かえって「#芦暁楠」からのハッシュタグ検索による検索結果の大半が原告に言及するツイートであることからは、実際に大半の読者が原告と芦暁楠という人物とを誤認し、あるいは、結び付けて認識していることが裏付けられる。よって、被告の上記②の主張は前提を欠き、理由がない。


大澤氏は「別の伊藤さんのことですよ」と言い逃れしようとしましたが、裁判所は「普通の読解力であなたの投稿を読めば、原告である伊藤さんのことを書いていると読むのが妥当ですよね」と判断しました。

では、大澤氏の投稿が、伊藤氏に対するものだと認められるとして、それが社会的損失を生む内容であるかどうか。裁判所は次のように判断しました。


社会的評価の低下の有無

本件ツイートは、原告が本名を芦暁楠、通名を「伊藤詩織」とする外国人であり、平成22年9月8日に東京地方裁判所で破産手続開始決定を受けたという事実を摘示するものであって、一般の読者の普通の注意と読み方とを基準とすれば、原告が多額の負債を抱え、経済的に破綻して破産手続開始決定を受けるに至ったかのような印象を与えるから、原告の社会的評価を低下させると認められる。
これに対し、被告は、①原告が芦暁楠という人物と別人であることは、本件ツイート時点で広く認識されていたこと、②本件ツイートに対するリプライの中には、原告と芦暁楠が別人であることを指摘するものも含まれるから、本件ツイートの下部に表示される上記リプライも読めば、原告のことを破産手続開始決定を受けた芦暁楠であると認識する読者はいないと考えられることを理由に、本件ツイートにより原告の社会的評価は低下しないと主張する。
しかしながら、原告が芦暁楠という人物と別人であることが、一般の読者による解釈の当然の前提であるといえるまで広く社会的に認識されていたと認めることはできないから、被告の上記主張①は前提を欠く。
また、本件ツイートは、読者がこれを閲読し得る状態になった時点で原告の社会的評価を低下させるものであり、 本件ツイートが投稿された後に本件ツイートにされた他者のリプライの内容によって、本件ツイート時点で原告の社会的評価が低下した事実自体に消長を来すわけではないから、被告の上記主張②は失当である。
そして、上記の摘示事実(補足:伊藤氏が破産経験のある外国人であること)は、真実に反しており、かつ、被告から上記摘示事実が真実であると信じるについて相当の理由がある旨の主張立証はない。
よって、本件ツイートは、原告に対する違法な名誉毀損行為に当たる。


大澤氏側は、「①多くの人は原告の伊藤さんが掲載画像と別人であると知っている。そして②大澤がツイートした後、『それは別人ですよ、間違いですよ』というリプライが多く集まったので、そのリプライも合わせて読めば、大澤ツイートを元に原告を非難することはない」と主張しました。しかし裁判所は、①そのような前提はないし、②間違いを指摘するリプライが来てくれたからと言って、大澤氏が伊藤氏の社会的評価を下げたこと自体がチャラにはなりませんと判断しました。

最後に、損害賠償額については、どのような判断がなされたのでしょうか。

 

損害の発生及びその額

(ア)本件ツイートは、それ自体原告の経済的信用を毀損し、その社会的評価を低下させるものであるところ、その態様は、通名を「偽名」と誇張して記載した上、その裏付けであるかのように官報公告記事の画像を転載するなど、読者の誤認を殊更誘引する演出を加えたもので、悪質であること、(イ)被告は本件ツイートの理由を自ら説明しないが、原告を名指しで中傷する態様でなければ名誉毀損とならないという趣旨の先行ツイートを踏まえると、本件ツイートでは、あえて原告とは別人である者を対象とする表現行為の体裁を用いて、先の持論のもと名誉毀損とはならないとする方法を実践したことがうかがわれ、そうであるとすれば身勝手な動機に基づくものと言わざるを得ないこと、(ウ)この点をおいても、被告の一連の先行ツイートから、 被告は、原告の別件名誉毀損訴訟提起に反感を抱いていることを繰り返し表明した上で、本件ツイートに及んだもので、原告に対する攻撃の一環であると認められること、(エ)被告が本件ツイートを発信したアカウントは令和2年7月2 0日時点で約1万8000人のフォロワーを擁していたもので、本件ツイートの社会的な影響は小さくないこと、(オ)被告は、本件の提訴報道後、ツイッター上に「伊藤詩織とかいう活動家が突然俺を訴えると言い出し た。正直全く意味が分からない。」、「俺は断固抗戦する。」、 「【悲報】 伊藤詩織、裁判前に一方的な会見を開き世論を味方に付けようとするも、反応が真逆で大失敗してしまう。」などと投稿し、原告に対する攻撃的な姿勢を軟化させていないこと、以上の事情が認められる。
そうすると、本件に現れた諸般の事情に鑑み、本件ツイートが1回の投稿にとどまることを考慮しても、原告に与えた精神的苦痛は軽視できないもので、原告に対する慰謝料の額は30万円が相当であると認める。


ここでは、大澤氏の、裁判前後のツイートなども考慮されているのがポイントです。 裁判所は、(ア)伊藤氏を「偽名の破産経験者」と位置付ける大澤氏のツイート内容は悪質なもので、(イ)名指ししなければセーフという独自理論は身勝手であるとしつつ、(ウ)もともと大澤氏は伊藤氏を繰り返し攻撃しているから本件ツイートもそのうちの一つであり、(エ)その影響力は小さくなく、(オ)さらに訴訟後もイキったツイートを連発しているから相変わらず攻撃的だよね、と判断しました。結果、大澤氏は敗訴し、33万円の支払いと、記事の削除を求められています。

 

伊藤氏側代理人のコメント

この結果を受けて、原告代理人である山口元一弁護士は、次のようなコメントを出しています。

① 同姓同名の別人物が存在するから、多くの人がツイートの内容をデマだと認識していたから、伊藤さんの社会的評価が低下していないという主張が排斥されたこと
② 通名を「偽名」と誇張したうえに官報公告の画像を引用するなど読者の誤認をことさら誘引する手法が悪質と評価されたこと
③ 名指しで中傷しなければ名誉毀損にならないという独善的な解釈の実践が身勝手と評価されたこと
④ 当該ツイートの前後に原告に対する反感を繰り返し表明しており、本件ツイートが原告に対する攻撃としてなされたと評価されたこと
⑤ 18000人のフォロワーをもつアカウントを通じたツイートで社会的な影響が大きいと認められたこと
⑥ 提訴後も原告に対する攻撃的な姿勢を維持している態度がマイナス評価されていること
など主張のすべてが認められている点については満足している。
損害賠償額はもっと高額であるべきだったが、ネット、特にTwitter上の誹謗中傷は、個々のツイートがそれぞれ悪質という点とは別に、誹謗中傷が多くのユーザーの目に触れることによってリツイートやコピーされるなどして新たな誹謗中傷を呼び、いわば大量の誹謗中傷となって被害者に襲いかかり、大きな苦痛を与える点に問題がある。本件でも、同種のツイートをしたのは大澤氏だけではないし、多くのユーザーが大澤氏のツイートをRTしている。代理人は、判決が、ネット上の誹謗中傷を許さない社会への一助となることを願っている。

伊藤氏代理人のコメントは、原告側の主張が全て認められたことに納得しつつ、後はこうした誹謗中傷問題が繰り返されないように望むという内容でした。

一方で大澤氏やその代理人は、メディア各社の取材に対しても、特段のコメントを出していないようです。

 

伊藤詩織さんを「偽名」とツイート、元東大特任准教授・大澤昇平さんに賠償命令【UPDATE】 | ハフポスト

反論について、大澤さん側の代理人はハフポスト日本版の取材に対し、「守秘義務のため個別案件の取材には答えられない」としていた。

伊藤詩織さんの裁判、「偽名」とツイートした元東大特任准教授に33万円命じる

BuzzFeed Newsは大澤さんに取材を申し込んでいる。

伊藤詩織さんを中傷 東大元准教授に賠償などの判決 東京地裁 | NHKニュース

東京大学の大澤元特任准教授は「勝訴しました」とか「4対6でギリギリ負けるかなと思ったが、7対3で大勝した。裁判長、公平な判断をありがとうございます」などとツイートしています。

 

流言を求める背景

今回、大澤氏がツイートした内容は、大澤氏以前にも複数のユーザーが行い続けたものでした。ではそもそも、「伊藤氏は偽名であり、日本人ではなく、破産している」というデマが、なぜ拡散したのでしょう。

これら流言は、「伊藤氏は虚偽の告発をしている」というイメージを強調するため、否定的ステレオタイプとして受け取られるような情報を含んでいる、ある意味で典型的なものでした。そのような内容の(偽)情報を求める人が、相応に存在したということです。

ウェブ上には、伊藤氏を「信用できない語り手」として位置づける情報を求める人が一定数います。そうした人々にとって、「偽名流言」「破産流言」はとても都合の良いものでした。実際に性暴力など存在しなかったはずだ。異なる集団に属する人が、利害意識に基づく虚偽の訴えを起こしたのだと確信できるためです。そのように位置づけることにより、自らの世界観などを保つこともできますし、さらには、自分たちが行っているのは二次加害や被害者非難ではなく、あくまで不埒な人間を成敗しているだけなのだという正当化を与えてもくれます。

大澤氏本人が、今回のデマツイートを、どこまで信じていたかは不明です。ツイッターでの言動などを見る限り、差別投稿などによる影響で懲戒解雇を受けた後から特に、排外主義政党への支持を表明したり、「保守系のためのSNS」を作ると宣言したりするなど、特定界隈へのPRが目立つようになりました(他にもモザイク削除AIなるものを販売もしていましたが)。もしかしたら大澤氏は、伊藤氏の事件そのものにことさら関心が高いわけでなく、「伊藤詩織を批判すること」によって、内輪に向けた目配せゲームを行う程度の動機だったのかもしれません。

しかし、本人の動機はともあれ、「名前と顔を出す被害者」に対して、軽率に「からかって良いのだ」とするようなカルチャーが存続していること自体、被害者にとって有害な空間になります。また、二次被害の溢れる空間が広がれば、被害を訴えることの抑止につながってしまう可能性があります。伊藤氏が改善を訴えてきたのは、まさにこうした加害風土そのものでした。

大澤氏の投稿そのものは、他の訴訟などと比べると、影響などを小さく感じられる人もいるかもしれない。しかし、そうした攻撃の積み重ねが、他者を精神的に追い込みうるのだということは、もっと周知されてしかるべきでしょう。

 

おまけ:謎の勝訴宣言について

なお、大澤氏は自身のツイッターで、「110万円の請求が33万円になったのだから自分の勝訴だ」という独自理論を展開しています。しかしこれまでみてきた通り、伊藤氏の訴えが全面的に認められた上、違法性の認定がされ、そのうえ削除と賠償を命じられています。どうみても大澤氏の敗訴です。

もちろん、賠償費用がこの額でいいのか、という議論はあります。他の名誉毀損裁判などをみても、中傷に対して認められる賠償金額の相場は、この判決と同程度の範囲が目立ちます。そして弁護士費用が賠償金額の1割程度という慣習も、原告などにかかる実際の負担と乖離しています。この点は、賠償額をめぐる判定のあり方が変わっていくことが望ましいと考えられます。その点では、110万円満額認められてもいいのではないかと、個人的な心情としても思います。が、それと大澤氏独自の勝利宣言は、全くの無関係です。

こうした場面は以前も見たことがあります。裁判で負けた側が、「相手の請求額の何分の1しか認められなかったから、その分だけ自分の勝ちなのだ」という理屈で、周囲にアピールするのです。大澤氏の場合、支持者の離反を防ごうとしているのか、それとも本気でそのような法理解をしているのかはわかりません。ただ大澤氏は判決前から、「55万以下なら自分の勝訴」という予防線を張っていたので、おそらく自らの主張が裁判所に認められず、賠償を命じられる可能性が高いことと、その金額の相場感がどれくらいなのかを、ある程度は把握していたのではないかと思います。

またこの裁判とは別件で、政治家の杉田水脈氏が、伊藤氏を中傷する内容のツイートに対して繰り返し「いいね」を行ったことについて、伊藤氏から訴えられているのですが、大澤氏はそのニュースを受けて、あたかも自分が「いいね」をしたことで訴えられたかのような誤認を誘う投稿を繰り返し、その上で訴訟費用のカンパを呼びかけていました。活動報告や収支報告など、どこまで寄付者に対する説明責任を果たしているのかは分かりませんが、特定の読者に「自分は正しい、自分は勝者だ」として支援を求めるのでれば、最低限の事実を説明したほうが良いかと思います。

より悲しいのは、それを真に受けてリプライを送っているような人が、少なからずいることです。一部のインフルエンサーが、そうした「応援者」や「仲間」と響き合うことによって、二次加害、三次加害を助長したり、継続しているーー。ウェブ空間をどう改善していけばいいのかを考えるためにも、まずはこのような現実を共有するのが重要となります。その意味でも、重要な判決であったと思います。