フランクフルター陰謀論2.0(ウソ)

渋谷のBOOK1stにて、安倍氏ブレーン五人組の一人らしい中西輝政さんの『日本人としてこれだけは知っておきたいこと』という本がトップ10入りしていたので、立ち読みしていたら、一ヶ月ぶりに「フランクフルター陰謀論(笑)」に遭遇。その本曰く、ジェンダーフリーフランクフルト学派の革命戦術の一種だそうだ。Amazonのレビューでも、「占領政策に垣間見えるフランクフルト学派の暗躍や、著者が、最近あちこちで力説している”コミンテルンとシノミンテルン”と日本の隠れマルクス主義者の共謀も紹介されています」などなど、好評価みたいです。もう好きにして。



中西さんは『諸君!』2005年7月号にて、「国連、知られざる誕生の秘密」という文章を載せていて(要旨はここで読めます)、本での解説はそこでのフランクフルト学派の解説とほとんど同じだった。本は買っていないので、そっちの方を引用してみる。


二十世紀以降、国民の多くを豊かな中産階級占める先進国においては、労働者と農民とを先頭としたプロレタリアート(労働者階級)による暴力革命を起こす、といった古典的マルクス主義ではなく、”市民”が個人の解放という共産主義の理想に向かって経済構造ではなく、社会や文化を変革していくという新しいマルクス主義、ネオ・マルキシズム第一次世界大戦後のヨーロッパから勃興し、やがて先進国における知的空間を支配していった。その代表的なものが、一九二〇年代のワイマール時代のドイツ、フランクフルト大学で誕生したアドルノやホルクハイマーによる「フランクフルト学派」であり、時代はだいぶ下がった一九六〇年代の日本や世界を席巻した新左翼運動の理念的支柱であったマルクーゼがよく知られた代表者である。

ネオ・マルキシズムというのは、表面上、一党独裁体制による疎外を訴えつつ、「掘り下げた」視点で人間の疎外の原因を既存の社会制度や伝統文化と捉え、そうした社会を成り立たせている核心、即ち人間の絆、人間関係を破砕し「純然たる個人」というものをつくり出し、「個人の解放」を金科玉条とすることにより、まったく新しい理想社会、理想的な人間が生まれていくという立場を繰り返しアピールする。

つまり、家族、伝統・文化、国家というあらゆる人間の共同体を崩してゆき、既存の社会に一大カオス(混乱・混沌)をつくり出し、それによって、古いマルキシズムでいう生産手段と生産関係に基づく「階級構造」を壊すことで国家、体制の変革を可能にし、その結果、「人類の解放」という理想が実現されるとして、その社会制度や既存の文化や常識の掘り崩しを狙うのである。要するにこれは「化粧直し」した共産主義イデオロギーなのである。このことを日本人は今こそ銘記(心に刻む)すべきなのである。


で、ジェンダーフリーは家族と性差を崩していって一大カオスを作り出すという、「化粧直し」の日本バージョンだー、みたいな感じだった(細かくは本で確認してください)。こんな調子で「フランクフルト学派」の認識が浸透しているのは、学問的にアリなのだろうかと他人事ながら気になる。とりあえず、後で仲正昌樹さんの『日本とドイツ 二つの戦後思想』とか読み返して、ちゃんと勉強してみようかしら。それと、こーんな感じのマッピングも出回ってるみたいなので、「フランクフルト学派とは」とか、やっぱあったほうがいいのかしらん。