リニューアルした『SIGHT』購入してみた。
ちょっと乗り遅れてしまったけど、リニューアルした『SIGHT』を購入してみた。『SIGHT』は日本を代表する音楽誌『ロッキング・オン』を出版しているロッキング・オン社が作っている雑誌で、発行部数は公称15万部とのこと。その『SIGHT』が「世界をリベラルに読む」というキャッチコピーを抱えて総合誌として再出発。巻頭言で渋谷陽一は次のように語っている。
雪崩のように保守化する日本の論稿シーン(そんなものがあるか、という議論はまた別にするとして)を見ながら、僕が待っていたのは、既存のリベラル系と思われるメディアの反攻である。しかし、リベラルと思われるメディアは一様に腰の引けた論陣しか張れず、歯切れの悪いメッセージしか出せないでいる。ニール・ヤングは若い世代を待つのを止めたようだが、僕も既存のリベラル系メディアの反攻をただ待つのを止めた。自分の本来の仕事は、優れたサブカル系の出版物を刊行することだと決めていたのだが、下手なりに総合雑誌というジャンルに挑戦することにした。ロッキング・オンを作って35年、初めてサブカル系でない雑誌のスタートである。切り口はシンプルである。常に知的で批評的でありたい、ということだ。別にとりたてて強い思想的な背景があるわけではない。あえて言うなら、ロックに植付けられたラヴ、ピース、そしてフリーという、中学生レベルの思い込みである。それでも、ニール・ヤングよりは5年若いが、、60年代に青春期を過ごした記憶のDNAには、それなりの反権力意識が刻まれているかもしれない。どこまで走れるか分からないが、とりあえず行けるところまで走ってみようと思っている。
渋谷おぢさんは怒ってるぞ! で、目次を見てみると、田中秀征×藤原帰一、北上次郎×大森望の対談、加藤紘一、北野武、ニールヤングのインタビュー、吉本隆明、高橋源一郎、斎藤美奈子、東浩紀、山形浩生、酒井啓子らのコラムなど、執筆陣はかなり充実。それぞれの文章は割に短いけれど、その分言いたいことがぎゅぎゅっと圧縮されていて読み応えは十分あった。雑誌としての性格も、『論座』『世界』とも『サイゾー』や『Intercommunication』等とも違った色が出ていて、しかもリベラル雑誌がのきなみ斜に構えた雰囲気があるのに対しかなり直球勝負をしているような印象。それでも『正論』などに比べると断然お上品なのだけど、この雑誌が新たなチャンネルとして機能するかどうか今後に期待したい。ただ、表紙がダサいのと、字がやたらと大きいのが気になる。『正論』『諸君!』『論座』等のオピニオン雑誌より大きいだけでなく、なんでロッキング・オン社のほかの雑誌よりも大きくなっているんだろう。もちろん、渋谷陽一の巻頭言や雑誌のスタイルなど、いい刺激はもらえた気がする。とりあえずAmazonでも買えるみたいなので、興味ある人はどうぞ。