産経新聞のクールビズ記事が変だったので。

クールビズ、節電効果にはつながらず 内閣府世論調査という記事に「小泉純一郎前首相が励行したクールビズの習慣が社会に浸透する一方、節電効果にはつながっていない実態が2日、内閣府がまとめた「クール・ビズに関する特別世論調査」で分かった」と書いてあった。ただ、記事の内容をどう見ても、その「世論」調査では主観的な意識調査しか行われておらず、なんでこれで「節電効果にはつながっていない」と書けるんだろうかと疑問が。どうも記事の論理が省エネされているような気がする。 

それによると、クールビズを「詳しく知っている」「聞いたことがある」と答えた人は合わせて91・2%、この習慣に「非常に賛同する」「ある程度賛同する」との回答も83・5%に達した。また、クールビズを「実践している」と答えた人は46・6%で、2年前の調査から15・7ポイント上昇。クールビズが順調に定着している実態が分かる。
 一方、クールビズが始まった平成17年以降に「冷房時の室温を高く設定した」と答えた人は13・5%にとどまった。また、現在のオフィスなどの冷房温度設定が「28度」または「28度より高い」とした人も35・0%と約3割どまり。地球温暖化防止の一環という本来の趣旨は、期待されたほどは浸透していないようだ。


というわけで元の「クール・ビズに関する特別世論調査(平成19年6月調査)」を読んでみたけど、やはり「節電効果にはつながっていない実態」になんて触れられていない。ここでは「認知度」や「実践度」などしかたずねられておらず、この調査結果から分かることはせいぜい「あんまり実行されてない」というお話。


「あんまり実行されてない」とはいえ、オフィスの冷房の温度を例年より高めに設定していると答えた人が合計45%いたのはすごいと思うし、3割が28度に設定するって結構な啓発効果だと思うけれど。ちなみにクールビズが28度に設定されている根拠は、事務所衛生管理基準に「事業者は、空気調和設備を設けている場合は、室の気温が十七度以上二十八度以下及び相対湿度が四 十パーセント以上七十パーセント以下になるように努めなければならない」(参照)と定められてることが理由らしい。なら、別に「例年は24度だけど、26度にしてみます」でもいいのではないか。「本当は冷房止めろといいたいけど、それだと法に触れるから、ギリギリの環境にしとけ」ということなのだろうか。で、「28度にしていないから、効果がない」と判断されると。うわーなんて形式的な。


タイトルに反して、記事内容は「本来の趣旨は、期待されたほどは浸透していない」と穏当に締められているけれど(ただ、「期待されたほど」って、具体的目標数値はあったのだろうか)、タイトルだけが一人歩きして、「冷房を低く設定しても無意味」「クールビズは無駄」というような意味で受け取る人も多いみたい。これはよくない。


参照
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/living/household/72917/
http://www.heiwaboke.com/2007/08/post_1039.html



というわけで、“この調査から「クールビズ意味ないじゃん」と判断するのは無理”と言う人がいなかったので、書いてみた。おしまい。


…とはいえ、クールビズという「国民運動」に賛成するつもりもあまりなくて。「クールビズ」な服装について言えば、省エネとか関係なしに個人的の選択肢が増えることは歓迎だけど、モデルケースを踏襲しないといけない、付和雷同たれ、というようなムードを引きずるのもどうかと。「スーツじゃないと駄目!」みたいなムードが緩和されるのは歓迎、ただし「28度じゃなきゃ駄目!」「ノーネクタイじゃないと駄目!」に置き換わるのは嫌。「環境のため」「自然のため」という文言が、「欲しがりません、勝つまでは」的なムードに取って代わるのは賛成できない。