「Political Books」の日本語版(バックラッシュ編)をやってみる。

キャンペーンブログにて、後藤和智さん、macska(小山エミ)さんと一緒にチャット大会を行いました。そこでchikiはサイバーカスケードの話をちょこっとしているのですが、それに関連して「Political Books」のことを思い出したので、バックラッシュ編で似たようなことを出来ないだろうかと思い立った次第。


「Political Books」とは、Amazonでのリコメンド(この商品を買った人はこんな商品も買っています)のつながりを分析し、右派系と左派系の書籍購買層が集団分極化している模様を描き出したもの。で、その結果は多分日本でもあんまり変わらないんだろうなぁとは思っていたのですが、せっかくなので念のため試してみることにしました。手書きで(笑)。絵心がないので線の引き方とかがかなりテキトーですが、こんな結果になりました(クリックで拡大)。






サンプル数は少ないものの、「Political Books」の結果とそれほど変わらないような結果ぽい。一応解説すると、「Political Books」同様、両極はまったくつながりがないという訳ではなく、特に「バックラッシュ」について考察するためにリベラル側が保守側の意見を検証しに行くという流れ、および「売れ線」の本からゆるやかに大衆受けする保守系の本へとつながっていくという2つの流れがありました。以下にそのフローを分かりやすく描いてみる。





バックラッシュ」というテーマだからか、リベラル側には保守系の本も薦められるが、保守系からはリベラル系の本が薦められにくかったりするなど、リベラル側が保守側の動向を参照しに行くという流れが確認できる。もちろん基本的には、サンプルが少ないのと手法が異なるため、本家の結果とダイレクトに比較したりすることは出来ないと思いますが、同質の傾向に固まっていくのはアメリAmazonと変わりがないのではないかと。ちゃんとした実験ではないけれど、参考程度にはなるかも。


で、この図で思い出したのは、チャット大会でのmacskaさんのこの発言。

macska
フェミニズムバックラッシュ言説を理解するというのは大切ですよ。でもそうやって分析して理解したところで、どれだけ効果があるかなと。逆にあんまり分析しすぎると、こんどはバックラッシュ側に議題設定されてしまうし。同室着替えがあるかないかとか、ジェンダーフリーの「フリー」はどういう意味かとか、そんなのくだらないでしょ。それで相手を論破したところで、何も得られない。議題設定の時点で負けている。だから、わたしとか chiki さんは相手の言説をすごく丁寧にウォッチして反論してきたんだけれど、それじゃ不十分なところもあるわけ。


仮に中間にある本が議論のテーブル(係争のポイント)を作っているのだとしたら、ネット上の論争の動向をみても書籍購買の流れなどをみても、macskaさんのおっしゃるとおり「議題設定の時点で負けている」のかもしれないと思いました。ちなみに『バックラッシュ』は、係争系の本と思想系の本および若者論系の本を橋渡ししているような感じ。なるほど。


なお、この現象は議論系の本に関わらず、おそらく他の商品でも変わらないと思うので、色々面白いことができそう。リコメンドのフローの変遷みたいなのを通事的にアニメーションにしたりすれば、左右のカスケードだけでなく、趣味のトライブはどことどこが一番遠いとかが分かったり、隣接領域が分かったりすると思う。例えば購買層が最も遠い漫画家や歌手の組み合わせが分かったり、涼宮ハルヒから出発して浜崎あゆみにたどり着くのは至難の業だと分かって納得できたりするかもしれない(笑)。本件にひきつけて言えば、例え趣味のトライブを越えた(越えたい)政策決定などの議論の場であっても、住み分けの度合いは変わらないということになるかもしれない。