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芥川賞受賞作家、金原ひとみ綿矢りさに萌える/拒絶する…言語は何処に?」


1月16日の朝日新聞朝刊に、斎藤美奈子が今回の芥川賞について触れていたので引用する。

「変化したのは受け手側」斎藤美奈子
19〜20歳の女性作家が三人同時にノミネート、そして金原・綿矢両氏の同時受賞が決まった。芥川賞の長い歴史の中でもはじめてのケースだったから、メディアが浮き足立つのも無理はない。だけど、先に言っておこう。これをもって「話題づくり先行だ」と眉をひそめた人も「文学の水準が下がった証拠」と嘆いた人も差別的な偏見にとらわれている。三十代の男性作家が三人同時にノミネート(なんてことは過去にいくらでもあった)だったら堅実な選択だとでも思った? それは「文学は大人/男子の専有物」と思い込んでる証拠でしょう。だいたい女性作家の活躍は、昨日今日、突然はじまったわけではない。80年代に林真理子山田詠美よしもとばななが出、90年代になって笙野頼子多和田葉子松浦理英子赤坂真理が高い評価を得、川上弘美江國香織山本文緒が人気を集め、一方では高村薫宮部みゆき桐野夏生が長編を出し続け…といった経緯をみれば、現在の文学界はすでに女性作家でもっているといってもいいほどだ。ここ数年、大きな文学賞の受賞者に女性が目立つとしたら「優秀な女性作家が増えた」のではなく「彼女達の作品を理解する(誤解や幻想がまじっているにしても)中高年の文学者が増えた」からだと私は思う。10代〜20代前半でデビューし、いまも第一線に立つ女性作家は少なくない。かつての芥川賞にはそれを評価するセンスがなかっただけの話。変化したのは受け入れる側。今回の結果もその意味ではごく自然な流れ。「若い/女子」だからといって甘くみちゃだめです。
朝日新聞より引用】

昨日も少しだけ触れたが、「若い」と騒ぐだけのメディアには付き合いきれない。
綿矢りさ」で検索し、色んなサイトをうろついてみたら「可愛い〜」「萌え〜」、もしくは「文学ではない!!」などの言葉が並びまくっている。…確かに「変化したのは受け手側」のようである。どうやら、順調に動物化してるようだし(「りさたん萌え〜♪」ですからね…。朝日新聞さん、そろそろ文学を「感性」で語るのはやめて(´Д`)…)。



若い女性が同時に受賞したこと、これは実に素晴らしいことだ。しかし、それだけを理由に「フレッシュだ」「いや、文学の衰退だ」と議論するのはまったくナンセンス(古っ!)である。このような意見は多くの(まっとうな?いや、現代ではもはや狂っている?)人なら誰しもが感じたことであろうと思うし、斎藤の批判も、そのような文脈へのジャブとなっているのであろう。
しかし、斎藤の批判は「偏見」を持っている人に対しての牽制にはなるが、斎藤が考える受賞の理由や書評が載っておらず、斎藤のポジションが全く見えないため、実際に「読んだ」上で批判している人にとっては、まったく無意味な意見となってしまう。「読まずに」批判している人があまりに多いので(読まない奴は批判する資格がない、という事ではない。そもそも何を持って「読んだ」とするかは非常に難しい)、その文脈では非常に重要な指摘だとは思うが、足場が確立されていないことで古典的なフェミニストの常套句に成り下がってしまうことだけは避けて欲しい。
もしかしたら別のところで書くつもりな(または既に書いている?)のかもしれないが、この引用した文章に関してのみ言えば、単に行儀の悪い文章にしかなっていないような気もする。



さて、翻ってchikiはテクストをまだ読んでいないので、読みもせずに「文学の衰退だ」と言うのは流石に躊躇します。これだけ騒がれて、しかし読んでいる人の少なさといったら!
と、いう訳で、今度読んでみます。それで駄目だったなら徹底的に批判(≠非難)します。(果たして彼女達は、自分の目の前で自分の著書を柄谷行人蓮實重彦に見せられるのか!? あ、綿矢りさ早稲田大学だから、石原千秋がいるじゃないか!! 石原千秋いわく「綿矢りさは俺の授業に出ないから駄目だ」そうな(友人談)。)



例えば石原慎太郎「物足りないね。若い男が駄目なんだ」と、相変わらずマッチョな態度です(「若い男が駄目」なのは同意します)。確かに、かつて「文学」と呼ばれていたものとは決定的に異質のもの、であるとは思いますが、それが即ち嘆かわしいことなのかは分かりません。
すくなくとも、現代出回っている他の小説と比べれば(ケータイ小説、とか)、ある程度の群を抜いている気がします。この件を受けて、ネット上の文学関連サイトはにわかに活気付いている(このサイトにも700人近くの人が「綿矢りさ」で飛んできている)。その意味では「フレッシュ」な出来事でした。問題は、このことにまっとうな言語で対処出来るか否か、だと思います。



まぁ、そのためにも、まずは読んでみようじゃないか。図書館で借りれば無料だし、そのうち新古書店にも並ぶさ!
な…嘆かわしい!?



参照URL
「芥川賞最年少受賞、“2人の美少女”の素顔 (夕刊フジ) 」
「作家の読書道」
「版元や書店に注文殺到 最年少芥川賞に反響」
「芥川賞受賞! 綿矢りさ萌え画像リンク集」