大西巨人さんが大長編構想

2月18日の日本経済新聞にて、「大西巨人が大長編構想」と題された大西巨人さんのインタビューが掲載されていました。年内に「世紀送迎篇」なる新作の連載を「巨人館」にてはじめるとのこと。『神聖喜劇』以来の大長編になるとか。以下、記事を一部引用。


戦後文学の最高峰の一つに数えられる大長編「神聖喜劇」。その作者である大西巨人が、再び大長編小説に挑む。来年米寿を迎える大西に、新作の構想を聞いた。
(…)「神聖喜劇」は、東堂二等兵が超人的な記憶力を武器に、不合理な軍隊生活に立ち向かう物語。古今の思想や文学の断片がちりばめられた思弁的な内容ながら、優れたユーモアが読者を飽きさせない。芥川賞作家の阿部和重は、二〇〇二年に復刊させた光文社文庫(全五巻)の第二巻解説で「日本文学史上の最高傑作の一つ」と書いている。
新作「世紀送迎篇」は、「神聖喜劇」以来の大長編となる。一九三〇年代から二一世紀初めまでの日本が舞台。「神聖喜劇」と同じく八部構成で、それぞれ独立しても読める連作スタイルとする。第一部「黄昏を行く人々」では、戦争への道を本格的に歩み始めた一九三一年の満州事変前後の時代を描く。
「戦争中から大事に温めてきたテーマ。戦前、戦中、戦後と、人々が時代とどう向き合ってきたかを映し出したい」と意気込む。三ヶ月間の濃密な軍隊生活を描いた「神聖喜劇」に比べて、歴史の大きな流れを追う作品になりそうだ。
現代を舞台にする第八部も、タイトルは「黄昏再び」に決めている。「憲法改定に向き突き進む現在の動きは戦前を思わせる。時間がかかり空想的といわれても、武力を使わずに国際紛争を解決する手段を求めなくてはならない。そうでなければ日本が戦争に負けた意味がない」その思想は四年間近くに及ぶ軍隊生活で味わった理不尽な体験に支えられている。第八部では社会全体がたそがれに向かう中で、新しい力がうごめいている様子を書く考えだ。
「とにかくスローモーだから」と自嘲するように、遅筆で知られる。八〇年に完結した「神聖喜劇」の執筆には二十五年かかった。「世紀送迎篇」では「三〇年分の時間の流れを一日に圧縮する」といった描き方をして、分量を「神聖喜劇」(四百字詰め原稿用紙四千七百枚)の半分以下に抑える。
(…)「電脳時代には活字出版は危機に陥るとか言われているが、共存共栄できるのではと思い、ネットで発表するようになった」と語る。「世紀送迎篇」も年内には「巨人館」で連載を始め、五年後の完結を目指す。
(…)文学に関する厳格主義者は、八十六歳にしてまた、ゴールの遠い長距離走に出る。

5年越しの長編! これは楽しみです。連載が始まったら当サイトでもご紹介させていただきます。