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「「ニート」は約85万人、10年前から27%増・内閣府」
上記リンクではありませんが、4月13日の日経新聞、27面に、玄田有史さんの「<経済教室>ニート、学歴・収入と関連」という長めの記事が掲載されていました。記事の内容は、先月、内閣府から発表された「青少年の就労に関する研究会」の中間報告を受けて、玄田さんがそのポイントおよび問題点を指摘するというものでした。報告書の詳しい内容は、「政府広報オンライン」で、PDFファイルにてダウンロードができます。また、記事から簡単なデータのみを抜粋した記事が「Letter from Yochomachi」さんにて読めます。



以下、骨子に関わると思われる部分を一部引用します。上記データを受けてのコメントとなっております。



今回発見された特徴的な事実の一つは、ニートと学歴との強い関係である。無業者の類型別に最終学歴構成を見ると、中学及び高校卒の占める割合は、非希望型、非求職型、求職型の順で高くなっている。求職型では、短大・高専卒もしくは大学・大学院卒が四割弱と比較的多いのに対し、非希望型では中学卒及び高校卒が八割以上を占める。ここからは、就職希望そのものを失っているニートの圧倒的多数は、高等教育を受けていないことがわかる。(…)学歴とともに今回浮かび上がったのは、ニートを抱える世帯の経済状況の厳しさである。ニートが話題になり始めたとき、ニートは裕福な親が子供を甘やかした結果、就業に対して無気力になったのだろうといった批判をよく耳にした。しかし、実態は大きく異なっている。ニートが生まれるのは、経済的に余裕のある家庭よりも、むしろ経済的に苦しい家庭であるという傾向が強まりつつあるのだ。(…)もともとニートとは英国で発祥した言葉であるが、その背景には社会の階層構造との関連が強く意識されていた。若年無業者を生み出す背景には、若者本人の意識や気力といった問題以前に、家庭や社会の環境にこそ原因がある。その結果、恵まれない社会階層の若者ほどニートになるという意識があった。日本においてもニートには学歴や世帯の収入が強く影響していることは、若年無業者の増加が日本社会の階層化の進展を象徴した存在であることを示唆している。(※傍線、強調は引用者)

記事では、この他にも労働需要不足と求人-求職間のミスマッチ、コミュニケーション能力の変化、「病気・けが」との回答率の多さからの職場環境の悪化の可能性などが指摘されていました。もし手に入るようであれば、一読の価値ありです。手に入れることがどうしても出来ない希望者の方がもしいらっしゃれば、chikiがさらに詳しい内容を個人的にメールさせていただいても結構です(迷惑メールと間違わないように、タイトルに「記事送信希望」と書いてください)。



昨今、ニュースサイトなどをうろついていると、フリーターやニートを扱った番組がネットで話題になる機会が増えているように思います。昨年行われた、id:kwktさんやid:ueyamakzk上山和樹)さんらを交えたニートをめぐるチャット大会でも、やはり「ニートと階級」および「階級とコミュニケーション」の問題を取り上げることとなりました。今後、ニートなどの問題から、「階級」「コミュニケーション」等の問題がさらにクローズアップされていくことと思います。



このことについて考える礎として、先月末に発売したばかりの、玄田さんの「仕事のなかの曖昧な不安―揺れる若年の現在」という本があります。同著は文庫で600円ほどの値段で手に入る、大変読みやすい良書です。一読をオススメします。文庫版あとがきでは、やはりコミュニケーションと格差についてコメントされていましたので、既に単行本でお読みの方も、あとがきや解説から得るものは多いのではないかと思います。