本日のメインディッシュ

「唐沢俊一+村崎百郎によるイラク人質事件への言及」「winnyを巡る夕刊フジの記事」に潜むもの
前者の記事は以前「今日のネタ」でもご紹介したのですが、この手の「意見」を放置しておくのもあれなので、簡単に触れたいと思います。まず、この記事に一貫している論理を簡単に要約しましょう。「見た目が悪ければ死んでもいい」「みんながムカついてしまうような奴はどうなっても構わない」これです。スケープゴートOK! 偏見による排除OK! 俺が楽しめればそれでいい! …そのような「意見」に基づいての記事です。これだけでも十分唖然とするに足りるのですが、「イラク人たちの心の中に、将来絶対に自分の国は自分たちで再建するという強烈な気概と独立意識がありさえすれば、後は何とかなるもんだ」という無知に裏付けられた楽観的発言にはビックリ。chikiは、本を書いているような人はもっと頭がいいと思っていたのですが、以後、このような偏見も捨て去ろうと思いました。



対して後者の記事はどうでしょうか? 一見普通の文章に見えますが、「オタク」という言葉の使われ方に着目してください。この記事で「オタク」とは、コミュニケーション能力に欠けるネクラでフィギア好き、そしてどんなに普段「真面目」であっても、一度「オタク」というレッテルを貼られたら「要注意人物」である、と。「イデオロギッシュ」「トンデモ勘違い」という言葉の使い方にも注目すれば、「反体制」=「超危険」の図式が浮かび、一種の「アカ狩り」、即ち「体制に背く者は逮捕されて当然」という意図が読み取れます。ここで「要注意人物=オタク」が結び付けられていることに注目すれば、一歩間違えれば「オタクは逮捕されても当然」というラベリングにもつながりかねません。この記事が「オタク=キモイ」という偏見に乗っ取って書かれたもの(俗情との結託!)だということはお解かりいただけると思います。



この2つの記事の共通点は「世間」の持つ「偏見」に便乗し、どうどうと差別を肯定している点です。唐沢俊一という人のことをchikiは全然知らないのですが、はてなキーワードによれば岡田斗司夫眠田直とともに、オタク芸人ユニット「オタクアミーゴス」というのを組んでいるとか。このような発言をする人が「オタク」を名乗るとはどういう神経なのか、chikiがバカだからなせいもあってよく分かりません。「オタク」を名乗ることで「弱者」の味方ぶっているのなら勘違いも甚だしく、本当にオタクだというのであれば意見を変えたほうが身のためでしょう(chikiは「オタク」を、字義通りの「弱者」だとは決して思いませんが、社会的に偏見を受けている、という文脈です)。



ここ数日のwinnyをめぐる動きも実に微妙です。「関連HP運営者宅を捜索 ウィニー、ページは閉鎖」という記事、「Winny関連ページが次々閉鎖、京都府警は「ノーコメント」」という記事に掲載されているように、「winnyを紹介しているサイト」の管理人が家宅捜索を受けたり、理由も分からないまま閉鎖になっています。これは実にとんでもないことです。どうやら警察は、P2Pを日本から消し去るためのキャンペーンに本腰をあげたようで、手段を選ばなくなってしまったかのようにみえます。しかし、いくつかのサイトの反応(2ちゃんねる以外含む)を見ていると、「自分はやっていないから興味がない」という反応の方が実に多く、もしくは「反体制なんてアホ」という方もいらっしゃいます。イラク人質事件の時と同様、今回の事件からの一連の流れは、ネットに携わる人だけでなく全ての人に影響を及ぼすものです。これは新たな形の思想統制とも言えるでしょうし、サイトにそのような書き込みをしている方々から表現の自由を奪う惧れのあるものでもあります。これは誇張ではなく(朝日新聞的なものでもなく)。



chikiはこのような流れを、括弧つきで「右傾化」と表現してみました。傾向として保守化、体制化しているという意味を含むのですが、しかしこの「右傾化」は単なる、かつての意味での「右」、即ち「全体主義」や「軍国主義」ではなく、この表現だとおそらく誤解を生んでしまいますし、妥当ではないでしょう。確かに「右傾化」とも呼んでも支障はない部分もありますが、より厳密に、少しでも精密な議論を行うよう、様々な角度から現代を見つめなおさなくてはなりません。chikiの知識量なんて限られたものですが、とりあえず『帝国』を巡る一連の議論、ポストモダニズム再考、アダム・スミスからケインズリベラリズムからネオコンネオリベラリズム等の経済思想史、などに軽く触れながら自分の立場を明確にしていく必要はあるかなと思ったので、不定期連載という形で少しずつ触れてみたいと思います。特にネオリベラリズムに関する議論には一度触れなきゃなー、と思っています。相変わらず無知だけど! 最初の連載は来週になると思います。もちろん、場当たり的に見えるいつもの「戯言」も続けたいと思います。




連載に際し、初心にかえって「知らない人にも前提を共有できるような平易かつ完結した文章」と「でもってユーモアを忘れない」の条件を掲げたいと思います。ルサンチ満々(ルサンチマンが満々、の略)は避けたいですからねー。




…しかし、続くかなぁ(不安)。




そういえば、この巨人の阿部の意見も微妙です…。「損害賠償」って。




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