コラムチキチキ塾で取り上げた本たち2010年7月〜10月
前エントリの続き。ぜんぜんブログ更新しなさすぎワロタ。なんていうか、ブログ更新という習慣が完全に身体から失われていまして。ツイートで大声で手短に叫ぶか、フェイスブックでダラダラとダベるか、更新欲求は両極に流れてしまった。コラムとかは、原稿に書いちゃうからなぁ。ネタは「SPA!」とかでやっちゃうし、政治的な意見はメディアで発言しちゃうし。うーんトラックバックって言葉も、もう懐かしさすら感じてしまうレベル。コメント欄開いてないと閉じてる奴みたいなニュアンス、あの頃あったよね。ブログるって言葉は、さっぱり流行らなかったよね。
それはさておき、「ニュース探求ラジオDig」の水曜パーソナリティ(昨年10月に曜日移動したの)として書評コラムしているわけで、どんな本を紹介したかをまとめていこうと思う。では、2010年7月分から。
【7月1日】http://www.tbsradio.jp/dig/2010/07/post-185.html
- 作者: 浜田宏一,若田部昌澄,勝間和代
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2010/06/25
- メディア: 単行本
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「伝説の教授」浜田宏一先生が、教え子である現日銀総裁・白河方明氏を「叱る」という、今でもタイムリーな一冊。僕が光文社新書の『日本経済復活』の編集をしたこともあり、「姉妹本」のような親近感から紹介。しかし、出版から1年以上経ったけれど、日本経済ちっとも回復しとらんぞ。
【7月8日】http://www.tbsradio.jp/dig/2010/07/post-201.html
この日は、オリエント工業の工房を見学しに行った話をしたので、本の紹介はなし。ただ、取材の模様は「週刊SPA!」にて書いていて、さらに次のような本にも書いている。宣伝乙。
- 作者: 荻上チキ
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2011/05/11
- メディア: 単行本
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自分の本から、従業員の方のコメントを一部引用。
「オリエント工業は1977年に創立しました。うちの社長が当時、浅草と上野でアダルトショップを経営していて、そこによく来る一人のお客さんがいたんです。その方は、空気式のダッチワイフを何度も何度も買いにくる。顔見知りになったので話を伺ってみたら、足の悪い方で風俗に行けないから、人形しか相手にならない。でも人形は、すぐ壊れてしまうので、よく買いにくるんだ、と。その話を聞いた社長が、「じゃあ俺がやるよ」と応じたらしく、ひとつ店をつぶして、製造の方にまわった。当時のダッチワイフは、見た目もよくありませんでしたし、質もよくなかったのですぐ壊れてしまう。なので、見た目も決して悪くはなく、簡単には壊れないダッチワイフを作ったわけです。そしたらそれが割と反響がよかったようで。それをベースに改良していったという経緯がありました。」
『セックスメディア30年史』「第5章 性と快楽のイノベーション 大人のオモチャ篇」より
こうした経緯もあり、オリエント工業は今も、障害者割引とかしています。それからもちろん、ダッチワイフからラブドールまでの歴史をまとめた本としては、
- 作者: 高月靖
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2009/08/04
- メディア: 文庫
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が有名ですね。僕も勉強させていただいた。未読の方はぜひ。
【7月15日】http://www.tbsradio.jp/dig/2010/07/post-217.html
- 作者: 東浩紀,濱野智史
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2010/05/25
- メディア: 単行本
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- 作者: 東浩紀,濱野智史
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2010/05/25
- メディア: 単行本
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ISEDの議事録が、色々加筆修正されつつ本になったもの。確か発売記念のシンポジウムに登壇して、その絡みで献本していただいたのだと思う。まだまだ通用する議論も多い一方で、あえて古びたところを読み、当時の気分を思い出すのも一興。
【7月22日】http://www.tbsradio.jp/dig/2010/07/post-235.html
- 作者: 中野雅至
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2010/07/16
- メディア: 新書
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ものの見事に「(民主党型)政治主導」は「失敗」したなぁと。「脱官僚依存」の方法論が何もなく、答弁では新米大臣がペーパーと耳打ち頼りに右往左往、総理だけでなく何回も各省大臣が入れ替わるため、結果として国全体の「官僚依存度」はむしろあがっているような。官僚批判のあり方そのものを検証している同書だけれど、官僚が意図的に操舵しているというより(いや、そういうケースもあるのだが)、結果として官僚のプレゼンスが様々な理由であがるというのを、ここ数年でみんなが体感したような。
【7月29日】http://www.tbsradio.jp/dig/2010/07/post-251.html
- 作者: 森田洋司
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2010/07/01
- メディア: 新書
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いじめについて真面目に考えるなら、森田洋司、内藤朝雄は外せないので、とにかく読もう。構造問題として捉え、国際比較などを踏まえれば、「日本独特の」とか「若者独特の」なんて俗説は相手にしている暇はないと分かると思う。
社会学的な理論化、ケーススタディに基づいた訴えかけ、それからいじめ対応マニュアルなどは、それなりに議論も溜まってきたように思う。けれど、もっと実践的で実証ベースのもの、発生したいじめへの短期的な対処ともまた違うアプローチの研究は、まだまだ足りないなと痛感する。
具体的には、リスク要因の分析が、もっと進んでほしいなと。それも、単なるソーシャルスキルの問題に還元するのでもない、具体的リスクファクターへの事前注視による、環境最適化や被害最小化のアプローチとか。疫学的な研究が必要になるので、現場と研究の豊かな連携が必須になる。学校の先生とのワークショップとか講演とかやると、そうした取り組みに飢えている先生も多いと感じるんだけど。
【8月5日】http://www.tbsradio.jp/dig/2010/08/post-269.html
食の安全と環境−「気分のエコ」にはだまされない (シリーズ 地球と人間の環境を考える11)
- 作者: 松永和紀
- 出版社/メーカー: 日本評論社
- 発売日: 2010/04/20
- メディア: 単行本
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コラムで松永和紀さんのこの本を取り上げて、翌週のテーマが「フードファディズム」だったので、
フードファディズム―メディアに惑わされない食生活 (シリーズCura)
- 作者: 高橋久仁子
- 出版社/メーカー: 中央法規出版
- 発売日: 2007/10
- メディア: 単行本
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この本の著者・高橋久仁子さんをお招きした。さらに翌週のテーマは「食料自給率から農業を考える」ということで、
日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率 (講談社+α新書)
- 作者: 浅川芳裕
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/02/19
- メディア: 新書
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の浅川芳裕さんをお招きした。3週連続で食関連。様々なバイアスがかかりやすく、非常に政治的なテーマでもある「食」の問題を、丁寧に考えていくためはどれもおすすめ。ちなみに8月26日は、当時注目していた、まだ一巻くらいしか出ていないおもしろマンガを複数紹介。
- 作者: 東村アキコ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/03/13
- メディア: コミック
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- 作者: 杉本亜未
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/06/22
- メディア: コミック
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- 作者: 石川優吾
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2010/02/27
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- 作者: 阿部洋一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/04/16
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- 作者: 石沢庸介
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/03/17
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- 作者: 諫山創
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/03/17
- メディア: コミック
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どれも継続購読中だ。
そういや雑談なんだけど、某電子書籍リーダーを使い始めてから、本を買う時に少し躊躇することが増えた。全ての本が電子書籍化されるわけではなく、電子化されるものもけっして発売と同時にネットショップに並ぶわけではなく、なかには続刊がなかなか電子化されねえっていうケースもあるってんで、「紙と電子どっちで買おう」じゃなくて、「紙で買いたくないけど電子で買えるのだろうか」で悩むのだ。スペース活用のため、部屋の棚からガンガン本を減らしたいのだが、「この本って結局電子書籍で買えるんだろうかムムム」と悩むのが、本当に面倒でねぇ。お偉いさん、この悩み、早く何とかしてくだせえ。じゃないとこのまま、自炊代行業者をフル活用することになります。
【9月30日】http://www.tbsradio.jp/dig/2010/10/post-408.html
- 作者: 広井脩
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2001/08
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この日は、流言研究の古典的名著を紹介。まだ絶版なので、古本屋で見かけたら速攻で買うといいです。大学院時代、廣井脩先生の授業を履修出来なかったのが本当に悔やまれる。
【10月14日】http://www.tbsradio.jp/dig/2010/10/dig-30.html
教育問題はなぜまちがって語られるのか?―「わかったつもり」からの脱却 (どう考える?ニッポンの教育問題)
- 作者: 広田照幸,伊藤茂樹
- 出版社/メーカー: 日本図書センター
- 発売日: 2010/09/16
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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俗流教育論批判経由、教育研究行き、初学者向け。
【10月21日】http://www.tbsradio.jp/dig/2010/10/post-456.html
- 作者: ウィリアム・イースタリー,小浜裕久,織井啓介,冨田陽子
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2009/09/04
- メディア: 単行本
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開発経済学の論争点がとてもよくわかる一冊。大言壮語を吐く、トップダウン式の、それでいて効率的で必要な支援というものを実現させない、「傲慢な援助」につながるばかりのビッグ・プランの問題を、具体的な事例や研究などを豊富に並べて、DisるDisる。だがそれも、「必要な支援」とは何かという議論を、前に進ませるため。「○○は間違いだ」の一言で、全ての議論や意義を否定し、結局は放置容認にしか繋がらないアンチ的言説とは大違いなので、長文だけど丁寧に読まれてほしい。
【10月7日】http://www.tbsradio.jp/dig/2010/10/post-422.html
【10月28日】http://www.tbsradio.jp/dig/2010/10/post-474.html
ニッポンの海外旅行 若者と観光メディアの50年史 (ちくま新書)
- 作者: 山口誠
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2010/07/07
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リスク・リテラシーが身につく統計的思考法―初歩からベイズ推定まで (ハヤカワ文庫 NF 363 〈数理を愉しむ〉シリーズ) (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)
- 作者: ゲルト・ギーゲレンツァー,吉田利子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/02/10
- メディア: 文庫
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この2冊は、読みたてで紹介したものの、あまり思い入れはないや。このジャンルに興味ある人は、何冊かめに読むといいんじゃないかな、っていう。
ちなみに、7月から10月の間に紹介した本で、個人的にいちばん良かった本、時間が経っても重要な読書体験として残ってる本は、ダントツで『傲慢な援助』です(というか、他の本がむしろライト路線が続いたのだ)。この手の学術的な本って、あまり一般メディアで紹介しにくくもあるんだけど、でもいいものはいいんで、これからもたまに取り上げていこう。
11月以降はまたいつか書きます。