PHP新書から『ネットいじめ ―ウェブ社会と終わりなき「キャラ戦争」』が発売するぉ。

今月中旬に、PHP新書から『ネットいじめ ―ウェブ社会と終わりなき「キャラ戦争」』が発売となります。内容を簡単に要約すれば、「学校裏サイト」やネットいじめに対する通説を批判的に検証しながら、ウェブ社会と学校文化などとの遭遇について丁寧に分析している一冊、ということになります。


ちょうど、昼間たかしさんと永山薫さんに受けたインタビューが公開されていましたが(荻上チキさんインタビュー「情報化社会と規制」@マンガ論争勃発のサイト)、こちらでも少しだけ、その議論の内容に触れています。以下抜粋。

僕はこの一年、ずっと<学校裏サイト>について取材・リサーチしてきました。毎日数十のサイトを閲覧し、一〇〇人のサイト管理人をはじめとした利用者にアンケートやインタビューを行い、いくつかの企業に協力を求め、淡々とデータを集めてきました。近々、書籍にてそれらをまとめたものが発売される予定なので詳細な数値などはそちらに譲りますが、結論から言えば、多くのメディアや専門家が誇張ぎみに<学校裏サイト>の問題を叫んでいるものの、実際には多くのサイトは平和的に利用されているということが分かる。
もちろんひどい書込みも中にはあります。ただ、アンケートをまとめてみると、<学校裏サイト>で叩かれるような人というのは、オフラインでも元々嫌われているような人が多かったりして、言うなればそこでは<スクールカーストの可視化>が起こっているというわけです。<学校裏サイト>が<いじめの温床>だと言われますが、そもそも<学校空間>自体が<いじめの温床>だったわけですから、学校と同じメンバーがウェブ上にコミュニティを持てば、同じような環境になるのは当たり前。もしそこでいじめが行われているのであれば、それはネットの問題として片付けるのではなく、コミュニティの問題としてケアされなくてはならない。そこでしなくてはいけないのは、<学校裏サイト>を使用させないことではなく、セーフティネットと、<学校勝手サイトの裏化>を防ぐための議論だということ。一方で、いじめにあったとき、ネット上のコミュニティが<逃げ場>になるケースも少なくないので、<学校裏サイト>の問題をもってしてフィルタリングを云々することは間違いだと、この場を借りて言っておきます。


本書の中では結構色々な論点に触れていて、そのテーマは実はネットいじめや「学校裏サイト」だけに限定されていません。ウェブ社会と学校文化との遭遇について書くために、そもそもウェブ社会ってどういう議論をされてきたっけとか、学校文化にあったサイン帳とかプリクラとか変体少女文字とかの文化が、ウェブやケータイとの遭遇で工夫されていき、顔文字やプロフや「学校裏サイト」などにもつながってるよねとか、「学校文化などとの遭遇」と書いたように、そもそもいじめが「教育」や「学校」だけの問題ではないこととか、様々なポイントを確認しなくてはならなかったからです。


そういうわけで論点は多岐にわたっていますが、しかしネットいじめを語るためにははずせない論点ばかりです。先日、内藤朝雄さんに草稿を読んでいただいた際、<僕の『「ニート」って言うな!』が「ニート問題について語るためには、まずこれを読め!」という一冊だったように、「ネットいじめ問題について語るためには、まずこれを読め!」、と言える一冊だよ>ということを仰ってくれたのは、本当に嬉しかった(その際に行った対談については、近日このブログで公開予定です)。


なお、サブタイトルにもある「キャラ戦争」という言葉は、学校空間が、あるいは日常のコミュニケーションが、どれだけ「強いキャラ/弱いキャラ」を構造的に・強制的に求めているのか、その風景を切り取るために本書で用いている造語です。学校空間などにおいて行われている「キャラ戦争」が、ネットを舞台にしたときにどうなるか。そういう視点から「ネットいじめ」を観察する作業は必要不可欠だと思うのですが、それが上手くいっているかどうかは、ひとまず発売後、皆様の判断を仰ぎたいと思いますので、まずはご一読いただければ幸いです。少しでも役に立てばいいなぁと、元いじめられっ子のひとりとしては愚直に思うのでした。まる。


ネットいじめ (PHP新書)

ネットいじめ (PHP新書)