『永遠の法』を観てきました(笑)/ついでに手相占いの件も簡単レポ。

『永遠の法』という、ベストセラーが映画化した話題の超大作(なんちゃって)を、友人にチケットをもらったので観にいきました。まずはあらすじを。

【あらすじ】(東映HPより)
近未来。科学技術の最先端を学んでいる高校生・隆太(高2)は、同じ科学技術研究部の研究仲間パトリック(イギリス人の同級生)、ロベルト(ブラジル人の同級生)と共に、夏休みを利用してアメリカを訪れていた。そこでニューヨークの街角でシャーマン(霊媒師)の老女に偶然出会い、謎のメッセージを伝えられる。それは、発明王エジソンが生前に研究していたという「霊界通信機」の設計方程式だった。
帰国後、隆太のガールフレンドである夕子も加わって、隆太の家の離れに作った秘密実験室に4人で霊界通信機を作り始める。実験をすすめるうちに、ついに霊界通信機から歌声が聞こえてきた。その声の主は私はエジソンだという。声は“危機”を訴えるが、途中で通信が途絶えてしまった。ところが今度はゴッド・イーグルと名乗る古代インカのシャーマンが機械を通じて語りかけてきた。そして霊界へ行く方法を教えられるという。
この世と霊界を自由に行き来するシャーマンのゴッド・イーグルの助けを借り、エジソンに会うために霊界へ冒険に旅立つ隆太たち。死後間もない人間たちが住む幽界の町や、生前の人生をすべて映し出されてしまうシアターなど、次々と不思議な世界を冒険する。過去・現在・未来の偉人達と出会い、様々なことを教えられたり。さらには「天使達の住む世界」を目指してさらなる冒険に旅立つ。
しかし、パトリックとロベルトが悪魔に連れ去られるというアクシデントが発生。隆太と夕子は二人を救うために勇気を奮って地獄へと向かう。だが、それは悪魔が隆太たちをおびき寄せるための恐ろしい罠だったのだが・・。人間の弱みに付け込もうとする悪魔達と対決する激しい冒険が今度は繰り広げられて。
霊界でのさまざまな冒険を通じて、限りない可能性を発見してゆく少年少女たち。彼らには未来への希望が燦然と輝いている−

ストーリーは、主人公が霊界を案内され、高次元のすばらしさと阿修羅界の恐ろしさをみせつけられた後、「これはすごい。現代人を救わなきゃ」と決意するというシンプルなお話です。要するに、「こういう人は天国に行けてこういう人は地獄に行く、というのが私たちのリアリティですよ」と解説する、かなりありがたやな映画。


映画によれば、現代人は人間らしい心の豊かさを忘れたため、最も地獄に行く人が多いらしい。映画を見る限り、私は間違いなく地獄に行くんだけれど、現世での生き方に応じた霊界に死後は行くという説明の際に、ひたすらパソコンをやらされる地獄とかが描かれていて、ブロガーの自分には確かに生き方に応じた世界だわぁと思いました。もしナローバンドでひたすらダウンロードを待たされる地獄とかだったら確かに地獄だけど、ブロードバンドならほとんど天国。「よーし、じぇいこんにトラックバック送っちゃうぞー」とか言いながら。マンガ喫茶みたいにドリンクフリーなら言うことなし。しかし、衣食足りて礼節を知るじゃないけど、「人間らしい」という枠組みに入れる人って現代人にこそ多い気がするので、もし本当に地獄に行く人が増えているのなら、それは単に人口が増えているからではないだろうか(ウソ)。


で、その地獄と天国のステレオタイプな描き方がすごかった。エジソングーテンベルクアインシュタインナイチンゲールマザーテレサ、ヘレンケラー、松下幸之助豊田佐吉は天使らしく(ここらへん、許可は取っているのだろうか)、様々な分野のパイオニアはより高次元に行けるらしい。偉人はほとんど全て天使の生まれ変わりという節操のないミーハーさの一方、名は残さないがそのポジショニングを引き受けるながらも確かに生きている「有象無象」な人たちへのリスペクトはほとんど感じられず。農家の人より貴族が、貴族よりも著名な科学者が高次元にいるというような階層分けなんか、その典型例。


一方地獄(阿修羅界)にはニーチェがいて(笑)、岡本太郎の「芸術は爆発だー」さながらのポーズで「神は死んだ!」と5回も叫んでいたりする。そんなお茶目なニーチェに対して主人公が30秒くらいで論破(笑)していたシーンはすごかった。「あなたたちの言う<自由>は人を不幸にする! 自分が現実を見たくないから都合のいい話を作っているだけだ!」というようなこと――ニーチェによる宗教批判の論旨を劣化コピーしたような内容だったのが皮肉なんだけど――を主人公が叫ぶと、まばゆい光が主人公を包み(笑)、ニーチェを圧倒する。そんな頼りないニーチェの変わりに、マブダチのヒトラー登場(笑)。ヒトラーいわく、人間をダメにするために悪魔の手先をたくさん現世に送り込んでいるらしい。その際に映されたのは、養老孟司筑紫哲也福島瑞穂など(笑)。友人によれば、原作の本ではハイデガーなど、他にも悪魔が名指しされているらしい。じゃあ、やっぱりネグリフーコードゥルーズはアウトなのかなぁ。デリダルーマンもあやしいだろう。宮台真司大塚英志は間違いなくアウトだね。本人が意図せず広めた場合もアウトとのことだから、これを読んでいる皆もうかうかしてられないよー。トラカレ読者の95%は地獄に落ちます。ブクマしたりリンクしたりしても落ちます。


で、あっという間に論破されて(笑)憤慨したニーチェヒトラーが召還した巨大な象の悪魔を、主人公が操る巨大ロボット(笑)で倒してました。その功績のお陰か、主人公は最高の次元を一瞬だけ垣間見た後、現世に帰ってよりよい人生を生きる決意をする。そこで映画はおしまい。要所要所で爆笑しそうになったんだけれど、他のお客さんが私の爆笑ポイントで号泣しているのを見て、遠慮してしまった。映画が終わると会場が拍手で包まれたり、上映後はロビーで客同士が握手をしながら感想を述べ合っていたり、「ああ、あこがれの9次元世界〜♪」みたいな歌で号泣していたり、『ぴあ』の満足度アンケートに「95点」って答えていたり、親子やカップルがニコニコと手を合わせて観ていたりして、ここは彼らのホームグラウンドなんだからアウェーな自分が気分を害すのもなんだと静かに観賞。ただ、一箇所だけ他の人も笑っていたシーンがあったので安心しました。


それは、人が死ぬとそれまでの人生を見ていた祖先たちによって人生を評価され、地獄に行くか天国に行くかを決められる、ということを説明するシーン。それをアニメでわかりやすく説明するため、人生がまとめられたVTRがスクリーンに映され、祖先たちは○×△のパネルを上げて評価してた(笑)。「キャバクラ行ったり煙草吸ったくらいで地獄かよ」「△ってなんだよ」「なんで妙に手続きが民主的なんだよ」と七色のツッコミがこみ上げてきてこらえ切れなかったのですが、他の人も「ふふふ」と笑っていたので遠慮なく爆笑。さすがに笑うよね、そこ。


ついでだから書くと、この間街で「手相の勉強しているんですけどー」の人たちに声をかけられたので、ついていってみた。バックラッシュについて調べた知識なんかを逆向きに応用して「最近は過激な性教育とかジェンダーフリーとかが話題になっているから気になって、世界日報とか読み出したんですよー」(意味は正反対だけど、ウソではない)とか相槌を打っていたら、見込みありと思われたのか色々なことを教えてくれた。「宗教とかではない」「勧誘とかではない」けれど、個人的な興味からたまたま世界日報を愛読している方々の話によれば、子供の頃に無償の愛をもらわなかったがゆえに空回りしてしまった人生を修正すべく、一度生まれたての状態になって正しい価値観を身につける必要があるらしい。もしまだ時間があったら、ビデオを見せられたあと、偉い人に会わされ(普段は忙しいはずの先生が、その日だけ、可能性のある私のためだけに、偶然にも時間が空いていたらしい。惜しいことをした:笑)、セラピーを繰り返すことでその状態にしてくれることになっていたらしい。心がきれいになれば、家族関係、人間関係、地域関係、国家関係へと広がっていき、最終的にはよい世界になるらしい。一緒に勉強していくために12万円が必要らしい。一度払うとそれ以上は要求されないらしい。夕方から終電ギリギリまで粘って話を聞いた甲斐あって、貴重な話を聞けました(「探偵ファイル」のレポと大体は同じ)。


それにしても、どちらの世界観でも私のようなライフスタイルを「悪い人生」に区別したいんだなぁと思うと、感慨しきり。私を否定することで健康が保たれるのならそれはそれでいいので、がんばって生きておくれよ。ただ、地獄行き予備軍だって、せいいっぱい生きてるんだぜ。



※おまけ。予告編のyoutubeどぞー。残念ながら「悪いニーチェ」は出てこないけど(笑)。