今月の「これから読む」数冊。

浅野智彦『検証・若者の変貌―失われた10年の後に』(勁草書房)
昨日のエントリーで簡単にレポさせていただいた「「思想塾公開トークセッション『若者の現在』」での個人的な収穫は、浅野智彦さんの話を生で聞けたことだった。浅野さんは、広田照幸さん、後藤和智さんと並んで最近個人的に注目したいと思っているお方で、ヘンテコな若者論があふれかえるなか、彼のように濃密な「<若者論>論」に触れることによってリテラシーと抗体を身につけておくことは重要だと思う。


芹沢一也『ホラーハウス社会―法を犯した「少年」と「異常者」たち 』(講談社)
こちらも「<若者論>論」関係の一冊。芹沢一也さんといえば、先日藤井誠司さんとの対談をアップしたり、「芹沢一也blog 社会と権力」を運営したりと、web上でもおなじみの方。両方チェックされたし。


山田昌弘『迷走する家族―戦後家族モデルの形成と解体』(有斐閣)
先日、斎藤環さんの『家族の痕跡』の読書会を行った際、近代家族について学生時代のノートなどを参照にしようと思ったんだけれど、今となっては「当たり前」のこととか「トリビア」的なことしかノートに書いていなくてあまり役立たなかった。というわけで、ここらで一度アップデートしよう! と意気込んで見つけた一冊。大学生の人は、今のうちからノートをしっかりつけておくと、生涯の宝物になるゾ。とほほ。


ハンス=ゲオルク・ガダマー『健康の神秘―人間存在の根源現象としての解釈学的考察』(法政大学出版局)
最近社会科学系の本を読む機会が多かったけれど、ここらでテクスト論を復習するために、色んな理論書を再度チェックしようと思っていたら目に飛び込んできた本。サブタイトルを見ず、タイトルからてっきり「ある哲学者の体操日記」みたいなものを連想してしまったのだけれども、もちろんそうではなかった(笑)。現代ドイツを代表する思想家(解釈学者)であるガダマーが「生/死」や「肉体/魂」の問題について書いたり語ったりしたことをまとめた一冊。健康になりたい人は、読まないほうがいいかもしれません。


西部邁『ケインズ』(イプシロン出版企画)
振り返ってみると西部邁さんの対談本は結構読んでいるのですが、とある方からこの本をお譲り頂き、一度系譜的に西部さんの本を読んでみようかと思っているところ。そんな西部さんを代表する本のうちの一冊。今月の『論座』では八木秀次さんと対談してましたが、八木さんが朴訥な(小室直樹さんが批判する意味での)伝統主義を自称するのに対し、もう少し狡知な視線を導入しようとする姿は多少心強くもあった。ところで、気付けば八木さんの本も半分近く読んでいることに気付き、友人に「時間の無駄だよ」と言われてへこんでいる。そうだよなぁ…。


すが秀実、花咲政之輔編『ネオリベ化する公共圏』(明石書店)
社会が成熟するとともに自明性の地盤が大きく変化し、自治空間≒公共圏が縮滅していく中、例えば身近であった「大学」のポジションも変容しつつあるとのこと。公共圏が「ネオリベ化」していくことを、編者のほか、松沢呉一宮沢章夫酒井直樹マイケル・ハート等が検討していく一冊。以前、「シンポジウム 大学改革と監視社会」というシンポジウムをレポしたことがあるので、そちらも参照にどうぞ。よく間違えられるけど、「秀美」じゃないよ、「秀実」だよ。


小谷野敦『なぜ悪人を殺してはいけないのか―反時代的考察』(新曜社)
小谷野敦さんからは目が離せない。なぜって、いつでも常に予想を上回るパフォーマンスを見せてくれ、究極の問いを躊躇なくぶつけてくるから。このエッセイ集も、そんな問いの倉庫として機能すると思う。たぶん。


柄谷行人『 世界共和国へ―資本=ネーション=国家を超えて』(岩波新書)
昨年末、『近代文学の終り』を出したての柄谷行人さんが、装丁が新しくなった岩波新書の<新赤版>に書き下ろした一冊。昨日購入してパラパラ読んでます。『トランスクリティーク』をアップグレードしつつ、専門家以外にも分かり易いよう平易な文体になるように意識したとか。但し、文体は平易ですが抽象度は例によって高いです。なお、<新赤版>については「岩波新書Q&A」を参照。触り心地がいいです。


木原善彦『UFOとポストモダン』(平凡社新書)
これは、宮台真司さん松谷創一郎さん加野瀬未友さんがそれぞれ面白がって紹介していたので、是非読まなくてはと思った一冊。お値段もお手ごろ。