東北地方太平洋沖地震(東日本巨大地震)、ネット上でのデマまとめ その6

このエントリーは「東北地方太平洋沖地震、ネット上でのデマまとめ」(http://d.hatena.ne.jp/seijotcp/20110312/p1)からの続きになります。


-ネットで流言を広める行為には、訴訟や書類送検のリスクもあります

ネットのデマ、警察庁がチェック強化 悪質なら摘発も
「被災地で強盗や性犯罪が多発している」といったデマが飛び交っている問題で、警察庁は1日、3月31日までに把握したネット上のデマ24件の削除をサイト管理者に依頼したことを明らかにした。同庁は17日から民間業者に委託してネットチェックを強化しており、特に悪質なものは摘発を検討するとしている。
警察庁によると、震災後、岩手、宮城、福島の3県の被災地では、強盗、強制わいせつといった被害の届け出は一件もないという。阪神大震災中越沖地震などの発生直後は犯罪全般が減少しており、今回も同様の傾向にあるという。
http://www.asahi.com/national/update/0401/TKY201104010389.html

震災めぐりネットに悪質書き込み 警察がデマ対策強化
東日本大震災で、インターネットの書き込みなどを通じ、被災地の治安情勢や原発事故に関するデマが広がっているとして、警察庁や岩手、宮城、福島の3県警などは1日までに、誤った情報に惑わされないよう呼び掛けるチラシの避難所への配布や、サイバートロール強化などの対策に乗り出した。
全国の都道府県警は、ネットに書き込まれた震災に関するデマ28件の削除をサイト管理者側に依頼。既に11件が削除された。
警察庁や3県警によると、ネット上で確認された被災地に関するデマは「国道の規制が解除され、プロの犯罪者が入ってきている」「殺人や暴行が起き、一人では歩けない状態」といった悪質な内容が目立つ。また、福島第1原発から半径30キロ圏内についても「外国人窃盗団が荒らしている」など根拠のない情報が出回っている。
これらのデマは、ネット上の掲示板や交流サイトに書き込まれた後、ツイッターチェーンメール、口コミなどで広まる傾向が強いという。
http://www.47news.jp/CN/201104/CN2011040101000891.html


逮捕そのものの可能性については賛否両論あるかと思います。ただし、これまでもネット上への書き込みによって、具体的に業務を妨害したり、名誉毀損や誹謗中傷にあたった場合は、逮捕されたり訴えられたりしたケースが多くあります。そういった意味でも、くれぐれもご注意ください。



-「行方不明」の東電職員は、逃亡して酒を飲んでいた?
次のようなコピペが一次拡散され、さらに具体的な職員の名前も記されているものまでありました。

信じがたい情報をいくつか。しかし決して「噂」ではない。
当初「行方不明」と言われていた福島原発の東電の職員は冷却装置を誤作動させたまま、郡山市まで逃げていたという。そこで酒を呑んで騒いでいたところを目撃されてバレてしまった。
もちろんいま現場では命懸けの作業が続けられている。しかしやがて初動のこういう出来事はきっちり検証すべきだろう。


しかし後ほど、その名指しされていた社員二人の死亡が確認されたと報道されました。

東電社員2人の遺体発見 福島第一原発津波被災か
地震発生時には中央制御室にいたが、被害を確認するため、地下に行って津波に巻き込まれたとみられる。死因は外傷による出血性ショック。
2人は電源や弁の管理を担当しており、地震発生後に地下に下りたという目撃情報があった。地下1階にたまった水の排水作業や水素爆発による退避などが相次いだため捜索は難航したが、3月30日午後に発見された。
遺体は翌日収容され、放射性物質を落としたのちに発電所外で検視され、2日までに最終的に身元が確認された。発見から公表まで時間がかかったことについて、東電は「ご遺族や警察に連絡するなど時間がかかった」としている。
http://www.asahi.com/national/update/0403/TKY201104030070.html

福島原発で不明の20代東電社員2人、遺体で発見
2人は震災当日の3月11日、4号機タービン建屋地下1階の調査に行ったまま行方不明になっていたという。死因は多発性外傷による出血性ショックで、死亡推定時刻は3月11日午後4時ごろ。津波に巻き込まれたとみられる。
http://sankei.jp.msn.com/region/news/110403/fks11040312420003-n1.htm


こうした、国をあげての騒動になるようなケースの場合、誤った陰謀論なども多く出回ります。例えば2004年のイラク人質事件の際には、「人質の自作自演説」もまことしやかに囁かれましたし、最近ですと尖閣ビデオ問題でも、「職員2名が中国人船員にモリで突かれて死亡」といった情報が広められていました。政府や関連機関が情報を隠している可能性を検討するのは国民・市民として重要ですが、その懐疑を補強してくれるような「怪しい情報」に対しても無防備であってはならないので、常に「確かな一次ソース」の有無の確認などが重要である旨、繰り返しておきます。


-AERA編集長がアカウントを削除?
AERA編集長がアカウントを削除した、という情報が広がっていましたが、以下のようにまとめツイートしている方がいるので、紹介します。

「尾木和晴AERA編集長がアカウント @tsukiji7を削除した」というデマが飛び交っているが、実際には尾木氏のアカウント @tukiji7は今でも存在している。さらに、元々存在しなかった @tsukiji7には「お好み焼き」という謎めいたアカウントが新設される、斜め上の展開。


僕も当該アカウントを最初に確認したことで、「ソースの確認」をしたつもりになり、この情報を鵜呑みにしてしまっていました。まったくお恥ずかしい限りです。「当該アカウントが消えているか否か」というチェックだけでなく、「存在しないとされるそのアカウントには、もともと本当にアカウントが存在したのか」というチェックが必要でした。改めて、ソース確認の慎重さを思い知ると共に、流言やデマをゼロにすることはできないがゆえに、それらをできるだけ最小化し、共有することの重要さを痛感した次第です。


-原発関連のデマについては?
このブログでは、原発などのデマや流言などはあまり扱っておりません。こうしたネタについては、ある程度の専門知がないと検証できないものが多くあるためです。そうした情報の確認については、「サイエンスメディアセンター」(http://smc-japan.sakura.ne.jp/)など、必要な情報をアウトリーチしているサイトをご利用ください。


ただし、八代嘉美氏の「放射線は『甘く見過ぎず』『怖がりすぎず』」(http://synodos.livedoor.biz/archives/1710889.html)というエントリーにもありますが、「正しく恐れる」ことはなかなかに難しいものです。明らかに専門家ではない人が、陰謀論を声高に叫んだり、あるいは断定口調で安全を訴えたりもしているため、情報の振れ幅が大変大きいのが現状です。その対立を「安全厨/危険厨」などと風刺的にまとめる呼び方もありますが、冷静な議論を進めていると見受けられる場合においても、自分と異なる見解・スタンスであるという理由で、「御用学者」「陰謀論者」といったレッテル貼りも行われている状況もあります。


デマなどの中和には「確かなソース」を提示するのが有効ですが、しかしソースが不確定で、しかもそのソースを分析・広報できる人が限られており、さらに事実が刻一刻と変化するというのが、原発に関わる情報の真偽確認の難しいところです。「正解」が固定的でないがゆえに、ある時までが正しかった情報が、ある時には誤りとなり、後になって「誤っていた」と避難されることで、情報環境の信頼性そのものが低下してしまう、ということも起こっているように思います。こうした理由などから、少なくとも当サイト、僕のスタンスとしては、そうした批判の応酬そのものから距離をとることにしています。ご了承ください。もちろん、ここで取り扱っている流言やデマも一握りである点も明記しておきます。


※なお、「一次ソースを確認しろ」というメッセージと、「マスコミや政府を信用しろ」というメッセージは別物です。念の為補足させていただきます。



(適宜更新しております)