デマとネットとリアリティと

不安送信デマメール 母親の間で出回る 仙台圏
大型スーパーのトイレで児童が乱暴された、と虚偽の被害を伝えるメール
 「大型スーパーのトイレで幼児がいたずらされる事件が相次いでいる」という虚偽の内容の携帯電話メールが、仙台圏の若い母親らの間で出回っている。多くの人に転送するように促す記述もあり、類似のメールが全国を駆けめぐっているとみられる。名指しされたスーパー側は「事実無根。問い合わせの対応にも苦慮している」と憤慨。ネット問題に詳しい研究者は「メールを回す前に情報の真偽を確かめて」と呼び掛けている。
 2人の子どもがいる仙台市の主婦(33)のもとに今月初め、友人からメールが転送されてきた。特定のスーパーで、児童がトイレに連れ込まれ、ボールペンで乱暴される被害が相次いでいる―との内容。文末では「たくさんのママに回して子どもを守ろう」と促している。
 ところが、実名を出された複数のスーパーは「警察にも確認しているが、そんな事実はない」と口をそろえ、宮城県教委、仙台市教委とも「そのような被害は確認されていない」としている。
 複数の関係者によると、同様のメールは仙台以外に関東や沖縄でも確認され、転送する際、スーパーの名前、場所など情報の一部を変えて出回ったとみられる。
 大型スーパーによると、9月ごろから真偽を確認する問い合わせが相次ぎ、4、50件に上った。神奈川県で始まり、関東などに広まったとみられ、関係者の1人は「誤った情報が広まった。『不幸の手紙』のような感覚で、いたずら半分に回されたらたまらない」と困惑する。
 別の大型スーパーには9月末現在、東京、近畿、東海地方の店舗に約130件の問い合わせが寄せられた。広報担当者は「1件ずつ、そのような事実はないと繰り返すしかない」とげんなり。
 電子ネットワークとうわさを研究している成城大文芸学部の川上善郎教授(61)=社会心理学=は「ショッピングセンターを舞台にした都市伝説ではないか」と指摘。「情報に踊らされず、転送する前に、新聞報道や警察で正しい情報かどうかを確認してほしい」と話している。
不安送信デマメール 母親の間で出回る 仙台圏


興味深い事例。まず、この手の不安流言は「ウェブ以前」にも存在していたし、記事からはそのパターンもあまり変わっていないように思える(もちろんちゃんと精査しないといけない)。「オルレアンのうわさ」や「外国人労働者暴行流言」(参照)などの例は、良い比較材料になると思う。


どのような流言が流れやすいかというのを分析すると、どのようなコミュニケーションのリアリティが共有されているのかが伺える。「街である人に親切をしたら、その人が実はオウムの人で、●●でテロが起こるらしいから××日にはそこに近づくなとアドバイスされた」というウワサのパターンが、数年後には「街である人に親切をしたら、その人が実はアフガニスタンの人で、●●でテロが起こるらしいから××日にはそこに近づくなとアドバイスされた」へと変わっていったのは分かりやすい例。ウワサのパターンだけではなく、ウワサに選択される語彙には注意が必要。


それにしても川上善郎先生の名前は懐かしい。学生時代、一年間だけ授業に出ていたんだ。検索して川上先生のウェブサイトを見てみたら、ショッピングセンター伝説という特集ページがあった。これは便利。