「統計のウソを見破るカギ」の実践例。

林道義『家族の復権』をなんとなく読んでみた。瀬口典子さんが「『科学的』保守派言説を斬る! 生物人類学の視点から見た性差論争」で批判していた澤口俊之さんの主張をそのままひっぱってきて、特にモンゴロイドネオテニー化が進んでいる(その分進化が進んでいるということらしい)のだから「しつけ」がなおのこと重要であると論じていたり、以前疑問を抱いたスウェーデンへのディスが掲載されていたりと、色々すごいなーと思って読んでいたら、次のような記述を発見して、全米、というか全細胞が震撼した。


 「母性神話」とか「三歳児神話」という言葉で否定されてきた母性についても、若い女性のあいだに健全な母性感覚が戻ってきていると感じられる。たとえば、私の授業を受けている女子学生を対象に、次のようなアンケート調査をしてみた(二〇〇一年末に実地)。
 応じたのは計235名。以下のような結果を得た(複数回答は不可、「その他」「無回答」を除く)。


1 赤ちゃんを育てている(連れている)母親を見てどう感ずるか
    a たいへんだなあ          105名
    b ステキだなあ・かわいいなあ    56名
    c 私も赤ちゃんがほしいなあ     58名

2 「母性本能」という言葉をきくと
    a 腹が立つ             14名
    b 負担を感じる           29名
    c 不安を感じる           34名
    d 当然と思う            134名

3 赤ちゃんのすごい能力について
    a すばらしいと思う         92名
    b なるほどと思って感心する     69名
    c 生命の神秘を感じる        64名

4 母は我が子のすべてを
    a 無条件で(善悪関係なしに)受け入れるのがすばらしい 28名
    b 善悪の判断は教えるべきだ     202名


 この調査は残念ながら毎年行ってきてわけではないので、過去との比較はできない。それに厳密に学問的な調査とも言えない。参考資料程度のものと思っていただきたい。それにしても、この結果を素直に見れば、ここには非常にまともで健全な感覚が表明されていると私は思う。「今どきの若者は」と言われるが、「私も赤ちゃんがほしいなあ」と感ずる者がこんなに多いとは予想しなかった。「母性本能」についても「当然と思う」が圧倒的に多い。この結果は、学生たちがこれまでに「母性本能など存在しない」とか「性別役割分担は作られたものだ」などという教育を受けてきたことを知っている者には、まことに驚くべきものである。少なくとも私は感動した。「日本はまだまだ捨てたものじゃない!」と。
日本人の大部分は健全な家族を営んでおり、家族を大切と考えている。崩れているとしきりに喧伝されているだけではないのか。
林道義『家族の復権』「序章「一番大切なもの」は「家族」!」


…これはすごい。(いろんな意味で)






とりあえず、いっこずつ見てみる。

「母性神話」とか「三歳児神話」という言葉で否定されてきた母性についても、若い女性のあいだに健全な母性感覚が戻ってきていると感じられる。
(…)この調査は残念ながら毎年行ってきてわけではないので、過去との比較はできない

過去との通時的な比較ができないなら凡人には「戻ってきている」なんて言えないはずだけど、「感じられる」林先生はすごい人だと思う。


1 赤ちゃんを育てている(連れている)母親を見てどう感ずるか
    a たいへんだなあ          105名
    b ステキだなあ・かわいいなあ    56名
    c 私も赤ちゃんがほしいなあ     58名

(…)「私も赤ちゃんがほしいなあ」と感ずる者がこんなに多いとは予想しなかった。

どうみても「たいへんだなあ」の方が多いように見えるけど、それよりも自分にとって予想外な展開の方に注目して特定の結論を導こうとする林先生はもしかしたらソフトバンクなんじゃないかと思う。


2 「母性本能」という言葉をきくと
    a 腹が立つ             14名
    b 負担を感じる           29名
    c 不安を感じる           34名
    d 当然と思う            134名

(…)この結果を素直に見れば、ここには非常にまともで健全な感覚が表明されていると私は思う。(…)「母性本能」についても「当然と思う」が圧倒的に多い。この結果は、学生たちがこれまでに「母性本能など存在しない」とか「性別役割分担は作られたものだ」などという教育を受けてきたことを知っている者には、まことに驚くべきものである。

「否定的な選択肢が3つなのに対して肯定の選択肢が1つなら当然そこに集中するよね」とか、「合計してみると235名のうち、否定的な回答および集計に含まれていない回答が101名いるって、林先生の授業を取るような人が対象のアンケートにも関わらず結構ギリギリの勝利だよね」、とか言う人は林先生によれば素直じゃありません。


3 赤ちゃんのすごい能力について

赤ちゃんはすごい。


4 母は我が子のすべてを
    a 無条件で(善悪関係なしに)受け入れるのがすばらしい 28名
    b 善悪の判断は教えるべきだ     202名

男だったら黙ってオールオアナッシング。「母は我が子のすべてを善悪の判断は教えるべきだ」って日本語としておかしくない? とか思う人は悪い教育を受けているので目を覚ますようにしましょう。


厳密に学問的な調査とも言えない。参考資料程度のものと思っていただきたい。

林先生、ごめんなさい。参考資料にもなりそうにないや…。だって、先生もこう言ってるし…。


『統計でウソをつく方法』 (ダルフ・ハフ、講談社) という本の中で、著者は「統計のウソを見破るカギ」として「誰がそう言っているのか ?」「どういう方法で分かったのか ? 」「足りないデータはないか ? 」等を挙げている。
「イデオロギー主導の偽「研究」」

以上のように、(…)繰り返し統計結果をごまかすというやり方をしてきているが、それはすべて自分たちを多数派だと見せかけたいという心理の現われである。ということは、つねに自分たちが社会の少数派だという意識があるためである。少数派にもかかわらず、国の権力を握り社会の主導権を握りたいという権力欲だけは人一倍ある者たちであることを示している。
「統計結果のごまかし」


とりあえず、林先生が身をもって示してくださったとおり、今後も統計には気をつけようと思いました。まる。



※例が例だけに、あまりいい「実践例」にはならなかったなぁ…。
追記。というかそもそも「統計」じゃないね、これ。