ネット社会について考える本(じんぶんやごっこ)。

宮台真司・神保哲生『ネット社会の未来像』(春秋社)
「丸激トークオンデマンド」 の書籍化第三弾。特に東浩紀さんとの鼎談は必読。なお、哲学者の東浩紀さんの本もまたいずれも重要ですが、『InterCommunication』55号に掲載されている「情報社会を理解するためのキーワード20」が導入にはいいのではないかと。付録のイラストはwebで公開されています。また、「ised@glocom : 情報社会の倫理と設計についての学際的研究」もチェックされたし。


北田暁大『嗤う日本の「ナショナリズム」』(NHKブックス)
社会学者、北田暁大さんが「ロマン主義」「シニシズム」をキーワードに70年代以降のメディア状況と現代のコミュニケーション形式についてパラフレーズしている一冊。北田さんはその後も「繋がりの社会性」など、ルーマンを参照にしつつ重要な視点を提示しているので要チェック。


佐々木俊尚『グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する』(文春新書)
梅田望夫『Web進化論 本当の大変化はこれから始まる』(ちくま新書)
ロングテール」「グーグル八分」など、ネット社会の裏と表について知る入門書。議論の概要を理解するだけならこの2冊で足りるかもしれない。もちろん東 浩紀+大澤真幸『自由を考える―9・11以降の現代思想』(NHKブックス)などでも議論されていた、個別化された環境管理型権力の問題などを絡めたりするとさらに議論が膨らむと思う。


鈴木謙介『暴走するインターネット―ネット社会に何が起きているか』(イーストプレス)
2ちゃんねるのオフ会などの分析から、インターネット上で行われている「ネタ的コミュニケーション」の分析を行っている。ちなみに宣伝ですが、『バックラッシュ』でもこの点について触れられているのでぜひ買ってください。ばるぼら『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』(翔泳社)がインターネット史と合わせて読むと、こっちはインターネットに関する平易な言説史としても利用できるかも。鈴木謙介『カーニヴァル化する社会』(講談社現代新書)と合わせて読みたい一冊。


ローレンス・レッシグ『CODE―インターネットの合法・違法・プライバシー』(翔泳社)
ローレンス・レッシグ『コモンズ』(翔泳社)
ローレンス・レッシグ『Free Culture』(翔泳社)
言わずもがな。3タテで読みましょう。


キャス・サンスティーン『インターネットは民主主義の敵か』(毎日新聞社)
「サイバーカスケード」という概念を提示しつつ、いくつかの事例からweb上のコミュニケーション形式を抽出し、それが民主主義(あるいは自由)という概念といかに(すれば)接続するか(しないか)という問いを提示する一冊。ところでこういうキーワードで検索すると常にトップに表示されるisedの文化的貢献はすごいと思う。


遠藤薫『インターネットと“世論”形成―間メディア的言説の連鎖と抗争』(東京電機大学出版局)
ほとんどアンソロジー形式で、ネットについて分析する面白い手がかりを多くの論者がいくつも提示している。2ちゃんねる管理人ひろゆきさんのインタビューとかも載っていて、これ自体が資料的な意味を持っているし。値は張るけれど、ガッツリ読む覚悟があれば手にとっていいと思う。


和田伸一郎『存在論的メディア論―ハイデガーとヴィリリオ』(新曜社)
ヒューバート・L. ドレイファス『インターネットについて―哲学的考察』(産業図書)
ちょっと小難しく「技術」の意味とか「存在」の変容などについて吟味するのには面白い2冊。ちょうど今読んでいるので要約はできないけれど、緩んだ頭を解きほぐすのに役立ってます、はい。


吉見俊哉『 社会情報学ハンドブック』(東京大学出版会)
「社会情報学」という学問体系はかなり若いけれど、その意義と可能性を提示する一冊。本の内容だけでなく、東大の「新聞研」が「社情研」に、そして「学環」に移っていった過程の中で吉見俊哉さんが果たした意義みたいなのに着目することも面白いかもしれない。吉見俊哉という名前は、数十年後のメディア論の教科書に載ってそう(笑)。


ハワード・ラインゴールド『スマートモブズ―“群がる”モバイル族の挑戦』(NTT出版)
ダン・ギルモア『ブログ 世界を変える個人メディア』(朝日新聞社)
インターネットやモバイルツールが、実際の報道や政治などに与える意義などを吟味する際に重要になると思われるのがこの2冊。ネットで「運動」を起こして、政治や報道について考えてみたいという人は必読。読後は、日本の状況とのズレに真正面からぶつかってみるといいかもしれない。