自民党PTの実態調査まとめ

こちらこちらに引き続き、「ジェンダーフリーとは」補足キャンペーン第三弾。最後に自民党PTのスタンスについて。今回は短めです。


これまでの検証で分かったことは、少なくともこれまで自民党PTがソースとしてきた資料からは「<行き過ぎたジェンダーフリー教育><過激な性教育>なんて全然蔓延してないじゃん」ということでした。ところが自民党PTは以上の回答を「約3500の実例」とかいいつつ、昨年12月「男女共同参画基本計画改定にあたっての要望書」なるものを提出。文章は以下のようなものです。


平成17年12月9日
男女共同参画基本計画改定に当たっての要望書

自由民主党
過激な性教育ジェンダーフリー教育
実態調査プロジェクトチーム

現在、内閣府において検討されている首記の件につき、過激な性教育ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム(以下PT)は本年3月に発足以来10ヶ月間に亘り、教育の正常化を目指すため議論を重ねてきた。

全国的な実態調査も行い、寄せられた3,500もの実例を調査・分析した結果、「ジェンダーフリー」という名のもと、過激な性教育、家族の否定教育が行われていることがわかった。同時に、教育現場でこのような暴挙が堂々と行われている根拠が、男女共同参画基本計画を恣意的に解釈し、組合組織の活動方針としていることなども現場での調査で確認をした。
 残念ながら、教育の現場では本来政府が推進している男女共同参画社会とは違った方向へと暴走が進んでいるのが現状である。
このような点からも「ジェンダー」と「ジェンダーフリー」の違いを認識するには、国内状況が至っていないものと判断し、現在内閣府が提示している「男女共同参画基本計画改定」にあたっては、「ジェンダー」という文言の削除、また多数の問題が指摘されている本改定案については、家族政策の充実を含めさらに十分かつ慎重な論議を行った上で閣議決定するよう強く要望する。

尚、本PTでは、調査結果を重く受け止めるとともに、立党50年新綱領にもある「男女がともに支え合う社会」の実現に向け、正しい男女共同参画社会の推進を望みます。

これまで見てきたように、寄せられた約3500の回答を分析しただけでは、「「ジェンダーフリー」という名のもと、過激な性教育、家族の否定教育が行われていることがわか」ることはないんですよね。仮に「現場での調査で確認をした」のなら、そちらも反証可能な形で公開されなくてはならないけれど、そうはしていない。もしソースや手法を一切公開せずにこの手の要望書とかを出せるんなら、いくらでもテキトーなこと言えます。



ところで、上の文章で「ジェンダー」を使うなと要求していますが、それは今に始まったことではない。保守系のメディアや宗教的メディアでは、結構前から「ジェンダー」概念こそが諸悪の根源であるとか主張しているし(多くは女性学史を踏まえていないような「起源」を持ち出すんだけれど)、例えば「男女共同参画基本計画に関する専門調査会(第12回)議事次第」にて提出されている「自民党過激な性教育ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム会合(7月7日)提出資料」にも、自民党PTはジェンダーを使うなとか、無償労働アンペイドワーク)を使うなとか、ジェンダーフリー思想の危険があるとか、女性学はいらないとか、いろいろ書いています。もともとこういう目的や方針があったということは知っておいたほうがいいかと。



これまでの検証で分かったのは、自民党PTの目的(「ジェンダーフリー」を悪者にして「ジェンダー」を削除したい)、手続き(アンケート方法やメディア利用)、結論(「3500の実例」)、使い方(公表方法や要望書ほか)のどれをとってもまずいということでしょうか。とりあえず以上で検証作業終わりですが、男女共同参画の問題のみならず思うところの多いエントリーとなってしまいました。とりあえず、長々と読んでくださってありがとうございました。ふぃー。