ケース3:淡々と解読したよ。

「大変お待たせいたしました。○○サポートセンター、担当のchikiでございます!」





今日も、サポセンの中の人であるchikiの声が職場に響く。世の迷えるユーザーを救済するべく、今日もその手を受話器に伸ばす。今回ご紹介する電話は、年を召した男性の方からでした。





お客様「あのぅ…コンピューターについてお聞きしたいのですが…」





chiki「はい。どういった内容のお問い合わせでしょうか」





××というコンピューターを使っているんですが、昨日までは使えたのに、今日使おうと思ったら、いきなり変な言葉が出てきて使えなくなっちゃったんです」





××というソフトですね? かしこまりました。起動すると、エラーメッセージが出てくる、ということで。ちなみに昨日は、どのようにパソコンの電源をお切りになりましたでしょうか?」





「ええと、いつもどおりに切ったんですが…」





「念のため確認させていただきますが、それはどういった方法でしょうか」






























「電源のボタンを5秒ほど押しました」



















Σ(゜Д゜; 強制終了じゃんっ!!!













「おっ、お客様、そのような方法は大変危険ですので、次からは「スタート」をクリックしてから終了させてください…」





「5秒押すのでは駄目なんですか?」





駄目です。今回はファイルの一部が破損、または紛失してしまっている可能性がありますね…。何か、エラーメッセージのようなものは表示されましたでしょうか?」





「はい。何文字か、表示されました。メモを取っております」





「それでは、そちらを読み上げていただけますでしょうか?」





「はい。まずは、さんの逆ですね」





「…ほえ?」





「ですから、さんの逆です」





「ええと…それは何かの記号でしょうか?」









アメリカの文字です」








アメリカの文字…もしかして、それはアルファベットのことでしょうか?





「あ、そのようです





そう。今回のお客様は、アルファベットが読めない方らしいのです。ここから、chikiとなぞの文字との戦いが始まりました。





「さんの逆……大文字のイーでしょうか?」





「いや、よく分からないです…」





「カタカナのヨ、に近いような…」





「あ、それの逆ですね。それが左端です。それから、右端が目のようなものです





「目のようなもの…アットマークでしょうか。丸の中にエーが入っているものです」





エーってどういうものですか?





「失礼しました。ひらがなの「の」のような形のものなんですが…」





「確かに「の」に似ています。「の」を寝そべらしたような形です






「えーと、小文字のイーですかね? 一筆書きが出来て、漢字の「巴」に似ているような」





「それみたいですね。両端はそういったもので、間にもいくつか並んでます」






これでは埒が明きません。このサポートを強制終了したいくらいです。というわけで、まずは全てを読み上げていただくことにしました。メモを取りつつ、エラーメッセージの一覧表と照らし合わせながらの解読です。





「それでは、とにかく全てを読み上げていただいてよろしいでしょうか。なんとなく、で結構ですので」




「はい。まず、さっきの、逆のさん、ですね。それから逆になった人が二人、または逆の入る。まる。逆の人、さっきのものですね。丸い子の逆、目の検査のような。それから、またまる。上向きのまいまい、煙突のようなものが生えていますね。そして目のようなもの、巴のようなものですね。で、数字がいくつか並んでいます」







さて、皆様は解読できましたでしょうか? chikiはとりあえず、エラーメッセージの一覧表から一番近いと思われるものを見つけることが出来たので、キーボードをみながら、大文字は右から何番目のどれ、あいうえおのどれが一緒になっているこれ、といった感じでひとつひとつ確認させていただきました。小文字に関しては、勘で勝負です。






Error Code=×××、でよろしいでしょうか」





「はい、そうです」






ようやくエラーメッセージを解読することが出来ました。言語を共有できた喜びもつかの間、chikiは途方もないことに気づいてしまいました。エラーコード×××というメッセージは、一旦ソフトの一部を削除した上で、修復インストールしなくてはなりません。





「一部」を削除するための方法は、エクスプローラーを開いてもらったうえで、cドライブの中のprogram Files、およびDocuments and Settingsのなかの一部を削除しなくてはなりません。実際にスタートキーを右クリックし、エクスプローラーを開いてみていただければお分かりいただけるでしょうが、その中身はほとんど全てがアルファベットの文字列なのです。これは電話ではサポートしきれないと思い、書面をFAXかメール、または郵送で送ろうかと思ったのですが…






「両方もっとらん。今すぐ使えるようにしたい」








とのこと。ひー(滝汗)。





それからさらに2時間以上かけて、ようやくソフトを正常な状態に戻すことが出来ました。もちろんその2時間は、淡々と文字を解読する作業。もうへとへとっす。