本日のメインディッシュ

『ディープラブ』流行についてマジメに分析してみる。
ここであえて言う必要もないと思いますが、『deep Love』はいかなる意味でも「文学」ではありません。むしろ、たまごっちみたいな「商品」です。ですが、そのことを理由に卑下するつもりはchikiにはありません。たまごっち等の流行の「商品」や現象を分析することで、社会性を浮き彫りにすることを多くの学者や批評家が試みてきましたし、中には眼から鱗が落ちるようなビビットな言説もありました。




さて、今日は、『Deep Love』という「商品」が何故ここまで売れ、「支持された」のかを考察してみたいと思います。とはいえ、chikiは(多少かじったことはありますが)社会学に関してほとんど無知なので、いくつかの簡単な図式を援用させていただく形になります。




①「感動」の理由1―「空白」の多用?
吉本ばななの作品が多くの人に受けるのは、ディテイルを描かず「空白」を多くすることにより、代入可能性を持たせているからだという説がありますが、ある程度頷ける意見です。同様に『Deep Love』がヒットしたのは、ほとんど「不幸」の要素を抱き合わせた部分意外が「空白」で、読者によっていくらでも代入可能だったからだとも取れます。(ちなみに受容理論の「空白」概念は批判によってもう「流行らない」ものになっていますw)そのことで、多くの人に受容されることのできる「商品」足りえたのです。




Deep Love』には描写の類が全くなく、台詞とアクションの記述、そして簡単な解説だけで構成されていますから、「これは私だ」と簡単に代入できる構造になっているのでしょう。もちろん、そんなことを言うのは「簡単に代入可能な自己」しか持っていない人だ、と皮肉じみた指摘することも可能だとは思いますが、そのような皮肉も、仮に読者が(少し前の?)宮台真司さんの言うような「意味から強度へ」を掲げるような主体であれば、「だから?」で返されてしまうでしょう。





②「感動」の理由2―「萌え要素」=「不幸要素」の記述
昨日も簡単に触れましたが、『Deep Love』には「いかにも不幸!」とか「いかにも悪!」な要素ばかりが羅列されます。具体的には「エイズ」「レイプ」「売春」「虐待」「ホスト」「戦争」「空襲」「殺人」などなどなど。もちろんこれら全てが「絶対に悪」というわけではなく、Yoshiさんが通俗的なイメージに則って(利用して)いるだけです。ただ、同じような通俗イメージを持っている読者にはそれがストレートに伝わってしまいます(エイズ感染発覚後すぐに死ぬことに疑いを持たず「リアル」と感じてしまう)。もちろん、そのような前提を共有していない人は「(゜Д゜)ハア?」と感じてしまいます。




東浩紀さんはアニメの「萌え」という概念を使って、現代(ポストモダン)の新たな構造を示しましたが、オタクがアニメを見て「猫耳萌え〜」「触覚萌え〜」というのと同様な形で、(掲示板等で見る限り)『Deep Love』の読者は「エイズ泣き〜」「空襲泣き〜」と反応しているように思います(ちなみにこれは「純文学者」柳美里に頻繁に与えられる批判でもあります)。もちろん、「実際の読者」が何を考えているかは分かりませんが、「実際の読者」は、(最近の)宮台真司さんが議論している「自尊心」や「メンヘル」の議論の枠組みで考えられるのではないかと考えています。(くしくもオタクとの比較が出たが、90年代後半からギャルゲーが不幸な要素を盛り込み、「感動」をキーワードとした「泣きゲー化」した現象と、対をなすのかもしれません。これもやはり、意味から強度?)





③ヒットの条件?―6つのキーワードから
井刈春男さんは「90年代の若者の読書条件」を6つのキーワードで分類しました。1「身近」、2「明るい」、3「短い」、4「すべて」、5「ユニーク」、6「感動」です。あまり図式に頼るのも問題があるのですが、非常にコンパクトな図なので便宜的に『Deep Love』を当てはめてみたいと思います。




1は、主人公が「アユ」という名前で、舞台が渋谷であることや、手軽に想像できる「不幸」で「重い」テーマが題材となっているあたりでしょう。また、ケータイというメディアが読者にとって身近であったことは言うまでもありません。
2、テーマは「明るく」なく、むしろ「暗い」。ですが、「重い」テーマを「軽く」扱っていたり、手軽に「暗い」ムードを味わえる、という点では逆説的に非常に明るい内容です。ケータイというメディアが面白い(=明るい)ものだともいえなくはないですが、このあたりは微妙です。ただ、「明るい」を「ポップ」に変換すれば、『Deep Love』はタイトルからして「ポップ」です。「ポップ」に暗い(笑)。
3、描写などを行えばかなり長くなるような分量ですが、かなり割愛され、読み終わるのに1日もかかりません。読書慣れしていない人にもそれほど時間を要しないでしょう。元がケータイのあの画面で見れる分量ですから、圧倒的に短い。
4、「すべて」というのは、一冊読んだだけで全て分かる、ということです。4部作になっていますから「一冊」では終わりませんが、「全て分かります」。
5、ケータイ小説、というジャンル自体が特異性を持つものですし、これほどあざとく、恥ずかしげもないような内容は他の誰も試そうとしませんでした。
6、反応を見る限り、説明するまでもないでしょう(笑)。




モデルが「90年代の若者」ですから、少しぎこちない分析ですが、このモデルに当てはめることで90年代―2000年代の若者読者の差異や同一性が多少判明する気もします。




これは推論ですが、「若者」とされている人の中で、『Deep Love』すら読まない人はいくらでもいるでしょう。むしろ、宮台的な「自意識系」だけが読書に走るとするならば、そのままの意味で「明るい」ものよりむしろ「暗い」方が好まれるのかもしれません。何せ、「暗い」方が「ブンガクな感じ」を味わえますから。




④メディア―「ケータイ」と読者
メディアは、アテンションスパン(集中持続時間)と密接なかかわりを持っています。ポップミュージックが大体4分くらいなのも、ドラマが一回1時間なのもアテンションスパンと関わりがあるといわれています。ちなみに、(以前紹介しましたが)ネットをやるとき、人の集中力は9秒しかもたないという説も。




ケータイ小説の文体が、やたら「解説」じみた文章が多かったり台詞の羅列が続いたりと「すっかすか」なのも、ケータイというメディアと関わりがあると思われます。Yoshiさんの文章も台詞と解説(○○は振り向いた。そこには△がいた。○○は驚いた…)ばかりですが(何かの脚本を読んでいるみたいです)、そのことで読書を「タルイ」と感じてしまう人でも大したストレスを感じさせないですむのでしょう。ちなみに、文体が「すっかすか」だと、中身も「すっかすか」になってしまうことは言うまでもありません。




ここまで、『Deep Love』がヒットした理由を考察してみました。そのことで、ある程度、現在「読書」を巡る社会性も見えてきた気もします。やっぱ、「若者」にとって「読書」って面倒なものなんですね(笑)。chikiも若者なんですが、所謂「若者」じゃないようです。改めて思い知らされました。




まだいくつか分析し足りない感はありますが、明日からは実際に『Deep Love』を皆さんと一緒に読んでみたいと思います(コメント欄で対話が行われれば、そこで明らかになることもあるかもしれませんし)。但し、今日のようにマジメに考察するのではなく、『Deep Love』を「お笑い本」として精読する試みです。扱うのは第二巻、『Deep Love ホスト編』です。請う、ご期待!






既に読んだchikiから一言。













「きっと、あなたも、涙します(ただし、笑い転げて)」










今日のネタ

「新文芸座 黒沢清×青山真治対談レポート」
id:Godardさんのレポートです。漫談みたいで面白いです♪


「携帯で痴漢を撃退できるか?」
様々な案が検討中のようです。「痴漢、逝ってよし!」です。あれ? 誤解されそうな…。


「就職活動に成功する5つの法則!」
役立つのか、これ…('A`)


「京都府警の捜査書類、ネット上に流出 Winny経由か」
京都府警といえば、winny逮捕時に「サイバー捜査日本一」を掲げたところでわ?


「FITC 2004 People's Choice Awards Voting」
カナダのベスト・フラッシュ2004です。


「「スパイダーマン3」の制作発表、公開は07年5月」
サム・ライミ監督といえば、『THE JUON』の撮影が終わったみたいです。この作品には友人がカメラ助手で参加しているので、スタッフロールを一番楽しみにしてます(笑)


「主人が妹の下着で!!」
(ノ∀`)アチャー


「自販機に誘われて」
ほえー。色んな種類があるんですね。


「お手柄! 2ちゃんねらーが殺人事件を解決!」
さすが日本規模のネットワーク(笑)


「卒論で「少女マンガ論」を書いた人が公開している」
少女漫画で卒論を書くのはそれはそれで意義のあることだとは思いますが、内容がないです。


「America Map Test」
アメリカの50州を当てはめましょう。…全然ワカランヽ(`Д´)ノ


「あなたのサイトはこう終わる!」

あなたの性格タイプはCタイプです。
あなたの基本性格はずばり理屈屋さんです。どこかいつも一歩引いてものを考えるのが好きなタイプです。
サイト閉鎖理由:「目標達成!!」
この結果が出たあなたはとても向上心があり、しかも忍耐力も兼ね備えています。この要素はサイトを成功させる上である意味、才能より重要なことかもしれません。その2つを兼ね備えたあなたがこの調子でいけばあなたの目指している目標を達する日が必ずやってくることでしょう。そこで次のステップへ進むか、ここでサイトを終わらすかはあなた次第ですが、どちらにせよあなたのサイトは満足な終わり方を迎えることが出来るでしょう。あとは運が味方してくれることを祈るばかりです。

すこしやる気が出てきたような気がしないでもない。